長井時広

長井 時広

長井 時広（ながい ときひろ）は、鎌倉時代前期に幕府に仕えた朝臣であり武将です。鎌倉幕府で初代政所別当を務めた大江広元の次男として生まれました。当初、大江氏の惣領は兄の大江親広でしたが、承久の乱によって兄が立場を失うと、時広がその後を継いで大江氏の中心人物となり、幕府の枢要な職務に携わりました。

生涯

長井氏の始まり

時広は、父の所領であった出羽国（現在の山形県と秋田県の一部）の置賜郡長井荘を譲り受け、その地を本拠としました。所領の地名にちなんで「長井」を氏とし、長井氏の家祖となりました。

実朝期における活動

建保6年（1218年）5月、時広は蔵人に任官します。同年6月には、源実朝が左近衛大将任官の謝礼として鶴岡八幡宮へ参拝するにあたり、その先駆けとして鎌倉へ下向しました。この実朝の鶴岡八幡宮拝賀に際しては、殿上人の一人として随行しています。7月にも、実朝が直衣を初めて着用する儀式に随行するため鶴岡八幡宮へ赴きました。

同年8月20日、時広は二階堂行村を介して実朝に京都への帰還を願い出ましたが、当初は許されませんでした。しかし翌21日、時の執権である北条義時の取りなしによって、ようやく帰京の許しを得ています。その後京都へ上り、10月には叙留（官職に留まること）されましたが、程なく鎌倉へと戻りました。

実朝暗殺と出家

建保7年（1219年）1月27日、実朝が右大臣に任官し、その拝賀のため鶴岡八幡宮へ赴いた際にも、時広は右衛門大夫として随行しました。しかし、この拝賀の最中、実朝は甥である公暁によって暗殺されるという悲劇に見舞われます。この出来事を受けて、時広は兄の親広とともに一旦出家しました。

大江氏惣領への道

承久3年（1221年）に発生した承久の乱において、兄の大江親広は後鳥羽上皇方に加担したため失脚しました。この状況下、父である大江広元が嘉禄元年（1225年）に没すると、時広は兄に代わって大江氏の惣領の地位を継承することとなりました。

幕府での役割と晩年

大江氏惣領となった時広は、幕府の中枢で重要な役割を担います。貞永元年（1232年）には、父広元が生前に収集した膨大な記録文書類を、当時の執権である北条泰時から譲り受けました。また、後に備後国（現在の広島県東部）の守護職にも任命されています。

嘉禎4年（1238年）または暦仁元年（1238年）には、自身の所領があった米沢の地に米沢城を築いたとする説も伝えられています。

仁治2年（1241年）に死去しました。その死後、家督は子息たちに継承されました。嫡男の長井泰秀は出羽国長井荘の所領を、次男の長井泰重は備後国の守護職を引き継ぎました。

その他

山形県の堂森善光寺には、時広夫妻のものと伝えられる坐像が遺されており、山形県の指定有形文化財となっています。

なお、『尊卑文脈』には時広が関東評定衆であったとの記述がありますが、『大日本史料』はこの記述が誤りであると判断しています。

参考文献・資料

『近世防長諸家系図綜覧』
『日本人名大辞典』
『吾妻鏡』
『大日本史料』『史料総覧』（東京大学資料編所データベース）
山形の宝検索navi（山形県教育庁）

関連項目

長井市
安芸福原氏
片倉城

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