大江親広

大江親広：鎌倉幕府を揺るがした男の生涯

大江親広（おおえ の ちかひろ）は、鎌倉時代前期に生きた武将であり、鎌倉幕府の御家人でした。父は幕府の実力者であった大江広元。彼はどのような生涯を歩んだのでしょうか。

生涯

親広は、源通親の猶子となり源親広と名乗ります。吾妻鏡には右近大夫将監として登場し、初めは鎌倉幕府2代将軍源頼家に仕えました。比企能員の変での動向は不明です。

建仁3年（1203年）には、将軍となった源実朝の元服に際し、北条義時と共にその手配を行います。父が幕府の実力者であったことから、実朝に寺社奉行として重用され、北条氏からも厚い信任を受けました。承元3年（1209年）頃から遠江守となり、政所別当の一人となります。建保元年（1212年）には、法勝寺九重の塔の供養の守護を務めました。

建保2年（1213年）和田合戦が起こりますが、親広は法勝寺塔婆供養のために上洛していました。鎌倉へ急ぎ向かいましたが、合戦には間に合いませんでした。

建保3年（1215年）には京都駐在の御家人の監督を命じられ、同年6月には将軍実朝の代理として明菴栄西の臨終に立ち会います。この年から民部権の少輔となりました。建保4年（1216年）には、父の大江復姓に合わせて大江姓に戻り、建保5年（1217年）には武蔵守となります。また、政所家司の一員も務めました。

建保7年（1219年）に実朝が暗殺されると、出家して蓮阿と号します。同年2月には伊賀光季と共に京都守護に任じられ上洛（武蔵守と民部権少輔は辞任）。翌年には一時鎌倉に戻り、義時、時房、広元らと小弓会で会合します。

承久の乱とその後

承久3年（1221年）の承久の乱では、親広は後鳥羽上皇の招聘に応じ官軍側に与します。古活字本『承久記』によると、後鳥羽上皇に義時を討つように迫られ、彼に従ったとされます。近江国食渡にて幕府軍と戦いますが敗北。宇治の合戦後は行方知れずとなりました。

この乱において、父広元は鎌倉軍の士気を高め、嫡男佐房は幕府軍の勝利に貢献しました。

戦後は行方をくらましたが、関寺付近で死去したとも、祖父の多田仁綱が目代を務める出羽国寒河江荘に隠棲したとも言われています。

乱後に離別させられた竹殿は、後に土御門定通の側室となり、後嵯峨天皇の即位と深く関わることになります。

中央の史料から姿を消した親広ですが、隠棲したとされる寒河江荘には足跡が残っています。父広元の死後、息子佐房に阿弥陀如来の尊像を彫刻させ、広元の遺骨を納めました。そして、自らの死後、阿弥陀堂の傍らに葬られたと伝えられています。

配下

承久の乱に敗れた親広に付き従った配下は、寒河江氏譜代の家臣として活動しました。

中山忠義
菅井義定
小野継胤
高橋満明
佐藤基春
渡辺義継

系譜

父：大江広元
養父：源通親
母：多田仁綱の娘
側室：竹殿（北条義時の娘）
側室？：竹御所官女（平時家の娘）
子：大江広時、大江佐房、大江高元、大江佐広、娘（藤原顕氏室）

大江親広の人物像

大江親広は、鎌倉幕府の重鎮である大江広元を父に持ち、源実朝に重用された人物です。しかし、承久の乱では後鳥羽上皇に与し、幕府に反旗を翻しました。その後の消息は不明であり、謎に包まれた人物と言えるでしょう。

参考文献

防長新聞社山口支社編『近世防長諸家系図綜覧』
五味文彦・本郷和人『現代語訳 吾妻鏡』
寒河江市史編さん委員会『寒河江市史 上巻』
寒河江市史編さん委員会『寒河江市史 大江氏ならびに関係史料』

関連資料

『吾妻鏡』
東京大学史料編纂所
山形県公立大学法人学術機関リポジトリ

関連項目

大江氏
寒河江氏
慈恩寺
* 寒河江八幡宮

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