長吏 (社寺の長官)

長吏（ちょうり）についての詳細

長吏（ちょうり）は、日本の寺院や神社に存在する重要な僧職で、多くの場合、寺院の長官や指導者を指します。元々この名称は中国の官名に由来し、特に日本においては主に座主や別当、準校として用いられています。日本の歴史において、長吏は著名な寺院や神社において、その指導的な役割を担ってきました。

寺院における長吏の役割

園城寺長吏

園城寺の長吏は「園城寺長吏」または「三井長吏」と呼ばれます。この役職は、貞観元年（859年）に円珍が三井寺別当に就任したことから始まりました。その後、特に江戸時代を通じて、聖護院門跡から多くの園城寺長吏が輩出されました。歴史文献「続群書類従」には歴代長吏の補任日が詳細に記載されています。現在の長吏は、園城寺の代表役員として信徒と僧侶による選挙で選ばれ、2020年には福家俊彦氏が第164代として任命されています。

江戸時代の著名な長吏には道晃親王や道寛親王、道祐親王がいます。それぞれが後の天皇の子孫ないしは皇子であり、その職位は代々皇族の者に引き継がれてきました。

勧修寺長吏

勧修寺においても、長吏は「別当」とも称され、寛胤親王が第15世長吏に就任したのが始まりです。ここでも長吏は主に皇族から任命され、歴代の長吏には済範や尊孝親王などが名を連ねています。現在、勧修寺長吏は筑波常遍氏が担っており、その地位は元皇族から受け継がれています。

歴代長吏の詳細は「続群書類従」の「勧修寺長吏次第」に記録されており、特に江戸時代では多くの皇族がこの役職に就いています。

楞厳院長吏

延暦寺の楞厳院でも長吏の名が使用され、その長は「検校」とも呼ばれています。楞厳院の長吏は特に寺院内の指導者としての役目を果たしました。

神社における長吏の役割

祇園社長吏

古くから京都の祇園社（八坂神社）においても、長吏職は重要な役割として存在していました。南北朝時代の内部では長吏が最上位の職階とされ、紀氏一族がこの職に任命されていました。

白山比咩神社

白山比咩神社の長吏もまた、神仏習合の背景を持ちながら、その運営責任を担っていました。長吏は藤原氏の末裔が就任し、幕末までの神社管理において特に重要な役割を果たしていました。白山比咩神社は、2,000社以上の白山神社の本社として知られ、長吏は神宮寺である白山寺の長とされました。

まとめ

長吏という役職は、寺院や神社において、宗教的な指導者として重要な位置を占める存在です。皇族から一般の僧侶まで、歴代の長吏がその地位を受け継いできたことで、多様な文化的背景と歴史的価値が形成されてきました。神仏習合の時代を経た長吏職は、今なお日本の伝統文化の一部として息づいています。

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