長善寺 (えびの市)

長善寺（ちょうぜんじ）

長善寺は、かつて宮崎県えびの市に存在した曹洞宗の寺院です。山号を兜率山と称し、本尊は弥勒菩薩の座像でした。曹洞宗の大本山である總持寺の末寺に属していました。

歴史

長善寺の創建は、室町時代の至徳2年（1385年）に遡ります。日向国臼杵郡出身の僧侶である明窓和尚が、能登国の定光寺で修行を積み、その教えを受けて薩摩国へ下りました。明窓和尚は薩摩で複数の寺院を建立した後、故郷に戻り安居寺を建立しました。その後、北原氏が治める真幸院飯野（現在のえびの市）を訪れ、北原氏の5代目当主である北原範兼の庇護を受け、長善寺を建立しました。

長善寺は北原氏の庇護のもと発展を続け、100町の寺領を寄贈され、さらに50もの末寺を擁するほどになりました。その影響力は周辺地域で絶大でした。大本山の制度に基づき、末寺の中から「竜昌院（後の宗江院）」、「清涼院」、「徳泉寺」、「昌明寺」、「大円寺」の5つの寺院を輪番寺とし、これらの住職が交代で長善寺の住職を務めました。

しかし、北原氏の庇護下にあったため、伊東義祐による北原氏の家督介入の影響も受けました。永禄4年（1561年）10月24日、長善寺にいた伊東氏の家督介入に反対する北原狩野介らを、伊東右衛門や長倉勘解由らが攻め討ち取りました。

その後、真幸院から伊東氏の勢力を駆逐した島津氏の庇護下に入ると、島津義弘から400石の寺領を寄贈され、その影響力を維持しました。しかし、天正年間に実施された寺社領整備によって、寺の禄高は減少しました。

文禄3年（1594年）には火災に見舞われましたが、当時の住職である喜雲和尚の尽力により復旧されました。しかし、それから20年足らずの慶長17年（1612年）に再び火災が発生し、建物や旧記録、宝物などが焼失しました。天保年間には再建が行われ、仁王門や鐘楼などが造られ、大伽藍へと整備されました。しかし、明治元年（1868年）の廃仏毀釈によって廃寺となり、明治3年（1870年）に撤去されました。

長善寺は、中世から近世にかけて地域社会に大きな影響を与えた寺院でしたが、時代の流れの中でその歴史に幕を閉じました。

参考文献

* 『えびの市史　上巻』えびの市郷土史編さん委員会編

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