長国寺 (恵那市)

長國寺（ちょうこくじ）

長國寺は、岐阜県恵那市大井町に位置する曹洞宗の寺院です。山号は稲荷山で、恵那三十三観音霊場の四番札所、そして中部四十九薬師霊場の番外札所としても知られています。この寺は、その長い歴史の中で、様々な変遷を経てきました。

由来

長興寺から長國寺へ

長國寺の起源は、古くは長興寺という寺名で、聖徳太子が彫ったとされる観音像がこの地に飛来したという伝説に遡ります。また、大宝2年（702年）には、行基が観音菩薩像を安置し、観音堂を建立したとも伝えられています。

平安時代には、円珍の弟子である覚源が観音堂を再建し、船岡山長興教寺としました。その後、鎌倉時代初期には、源頼朝の家臣である禰津是行が子宝祈願成就の礼として馬具を奉納しています。この馬具は、現在も恵那市の有形文化財として大切に保存されています。

禰津是行は、荒廃していた大慈山長谷寺の復興を願い、天台宗の栄慶和尚を招いて復興にあたりました。文治3年（1187年）には、栄慶が稲荷を寺の守護神とし、寺号を稲荷山長國寺と改めました。

西行法師もこの寺を訪れ、妊観音に祈念した後、中野坂で入滅したと伝えられています。西行の位牌は、現在も長國寺に安置されています。

しかし、室町時代の永正8年（1511年）には、戦火により伽藍が焼失してしまいました。

井口長谷禅寺

一時、この地には臨済宗の了翁義正が庵を結んでいましたが、度々賊に襲われました。その後、岩村城主の遠山景任が家臣の藤井常高に命じ、元亀3年（1572年）に井口長谷禅寺が建立されました。

しかし、天正2年（1574年）には、武田勝頼の東濃侵攻により寺社が焼討ちにあい、井口長谷禅寺もその被害を受けたとされています。

曹洞宗 長國寺として再興

慶長元年（1596年）には、了翁義正の要請により、開元院から體巌雲恕がこの地に来て、慶長2年（1597年）に曹洞宗の寺院として長國寺が再興されました。

體巌雲恕は、馬場山田村に盛久寺を開山し、岩村の盛巌寺の住持も兼任しました。長國寺は、江戸時代の延宝年間に現在の地に移転し、現在の本堂と開山堂は元禄年間に建立されました。

寺宝である十一面観音、千手観音、聖観音は、元々武並神社に祀られていたもので、神仏分離令により長国寺に移されました。これらの仏像は、尾張熱田の仏師、栗原宗左衛門尉明貞によって作られたものです。

その他、行基、西行法師、禰津是行の位牌も安置されています。

御詠歌

こゑなくば　いかですぐさむ　長國寺　まだ夜ふかきに　鳴くほととぎす

文化財

恵那市指定有形文化財

體巌雲恕座像
仏涅槃図
馬具

末寺

宗久寺（恵那市東野）
長徳寺（恵那市長島町久須見）
源長寺（中津川市茄子川）
福昌寺（中津川市駒場）

長國寺は、その長い歴史の中で、地域の人々の信仰を集め、多くの文化財を伝えてきました。現在も、静かな佇まいの中で、訪れる人々に安らぎを与えています。

脚注

参考文献

恵那市史編纂委員会 編「第八章 江戸時代の社会生活と文化 第二節 社寺と文化 長国寺」『恵那市史』 通史編 第2巻、恵那市、1989年3月、1050-1052頁。全国書誌番号:89042403。
加藤護一 編「第四篇 鎌倉時代 第十六章 遠山氏（一） 【社寺建立】 長國寺」『恵那郡史』恵那郡教育会、1926年、106頁。NDLJP:1021178/89。
加藤護一 編「第六篇 戦国時代 第二十六章 禅宗の興隆 【曹洞宗】」『恵那郡史』恵那郡教育会、1926年、200-202頁。NDLJP:1021178/136。
加藤護一 編「第八篇 現代 第四十一章 人文の発展（一） 【各宗寺院】」『恵那郡史』恵那郡教育会、1926年、612-619頁。NDLJP:1021178/346。
「長国寺」『岐阜県百寺』郷土出版社、1987年5月、186-188頁。全国書誌番号:87045692。
『中部四十九薬師巡礼』 p126～p129 中部四十九薬師霊場会 冨永航平 朱鷺書房 1999年

関連項目

正家廃寺

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