武並神社

武並神社について

武並神社（たけなみじんじゃ）は、岐阜県恵那市を中心に複数存在する神社です。特に、恵那市大井町にある武並神社は、旧社格が郷社であり、この地域における信仰の中心的な存在でした。ここでは、大井町の武並神社を中心に、武並神社全体の歴史や文化、各神社の特徴について詳しく解説します。

武並七社と武並十二社

鎌倉時代から戦国時代にかけて恵那郡を治めた岩村遠山氏は、武並神社を氏神として崇敬しました。そのため、恵那郡内には最盛期には12社の武並神社が存在したとされています。このうち、恵那市内には現在でも7社が残り、「武並七社」と呼ばれています。

武並七社の所在地

現在、恵那市内に存在する武並七社は以下の通りです。

大井町
岩村町
武並町竹折
武並町藤
長島町久須見
三郷町野井
三郷町佐々良木

また、大井町の武並神社の支社として、かつては東野、長島町正家、長島町中野、長島町永田、中津川市茄子川にも武並神社が存在し、これら5社を加えて「武並十二社」と称していました。しかし、これらの5社は明治時代以降に他の神社と合祀され、現在は存在していません。

恵那市大井町の武並神社

祭神

大井町の武並神社は、以下の三柱の神を主祭神として祀っています。

大己貴神（おおなむちのみこと）
誉田別命（ほんだわけのみこと）
少彦名命（すくなひこなのみこと）

また、配神として源頼朝、源頼家、源実朝の三将軍が祀られています。

歴史

大井町の武並神社の創建は、承久2年（1220年）に、茄子川・谷武内城主の新田四郎左衛門義晴とその息子である神子母城主の新田淡路守義綱が、鎌倉幕府の三将軍の廟を詣でた際に、杉の小株を持ち帰り、社殿の西・北・東の3か所に植え、中央に三将軍の像を祀ったのが始まりと伝えられています。

当初、境内には七重の塔や別当寺、宝蔵があり、現在の数倍の広さがあったとされています。その後、伊豆国の三島の神官の市川兵庫頭実氏と手向城主の勝甚太夫直定を招き、神務を司らせました。また、12人の禰覡と12人の巫女を置き、神楽などの神事を行わせていました。

新田氏は北条泰時に願い出て「従一位大師公 武並大権現」の神額を授かり、田畠数百町歩の公税免除を得ました。この収入を歳費とし、周辺12ヶ村の神としました。

しかし、永正8年（1511年）に大井町周辺の神社仏閣が兵火により焼失しました。神像は廟主が井戸に隠したことで難を逃れましたが、鐘は岩村城に持ち去られました。その後、田畑は住民に奪われ、社司や寺僧は各地に離散し、昔日の面影は失われました。

天文7年（1538年）には、岩村遠山氏の遠山景前が梵鐘を寄進しました。この梵鐘の銘には、「濃州恵那郡遠山荘大井郷正家村武並大明神之鐘　天文七年戊戌七月十二日鋳之」と記されています。

永禄6年（1563年）には、遠山景任が家臣の藤井常高に社殿の再建を命じました。この時の棟札には、御本尊として千手・十一面聖観音が記されており、当時は本地仏として合併祀られていたことがわかります。翌年、社殿が完成し、遠山景任は神事を修し、猿楽を催しました。

美濃御坂越記には、「武並大権限(現)　大己貴命　大井村　東野村　正家村　中野村　長(永)田村　近所諸村の宗社トス」とあり、周辺地域からの信仰を集めていたことが伺えます。

天正2年（1574年）には、武田勝頼による東濃侵攻の際に、社殿が焼失しました。その後、明暦元年(1655年)に尾張藩の命により、武並神社の森林の一部が橋梁の材として伐採されました。その後、庄屋の井ノ口伊兵衛義次が中心となり、寛文12年(1672年)に社殿が修復されました。この時、社殿は丹塗で美しく塗り直され、その跡は現在でもかすかに残っています。

延宝元年（1673年）には、黄檗宗の僧の通源禅徳が、廃寺となっていた東禅寺を境内に移しましたが、その後、東禅寺は武並神社の境内を離れて現在地に移転しています。

文化財

大井町の武並神社は、その歴史的価値から、以下の文化財が指定されています。

重要文化財: 本殿（附 銘札2枚、棟札1枚）
岐阜県指定文化財: 昭和38年（1963年）指定

例祭

大井町の武並神社では、毎年10月第2日曜日に道笛祭りが開催されます。

現地情報

所在地: 岐阜県恵那市大井町字森1101
交通アクセス: JR中央本線及び明知鉄道恵那駅下車後、車で約10分

恵那市岩村町の武並神社

岩村町の武並神社は、武並山の山頂に鎮座していましたが、大正4年9月に現在の場所に移されました。この神社は、町を見守る氏神として、町民の信仰を集めています。

祭神

大己貴神（おおなむちのみこと）
誉田別命（ほんだわけのみこと）
少彦名命（すくなひこなのみこと）
配神: 遠山景朝

歴史

岩村藩神社調べによると、延久元年（1069年）に鎮座したとされていますが、実際には鎌倉時代末期、あるいは室町時代初期の建立と考えられています。

寛永8年（1631年）には、岩村藩主の松平乗寿が社殿を改築し、秋祭の行事を創設しました。この行事は、岐阜県無形文化財に指定されています。

文化財

市指定史跡: 旧武並神社跡（武並山上に所在）
市指定文化財: 古神輿、神輿、寛永棟札

恵那市三郷町野井の武並神社

野井の武並神社は、万治2年(1659年)に丹羽勘兵衛によって創建されたと伝わりますが、それ以前から存在していたと考えられています。

祭神

大己貴神（おおなむちのみこと）
誉田別命（ほんだわけのみこと）
少彦名命（すくなひこなのみこと）

歴史

万治2年（1659年）に岩村藩主の丹羽氏定の弟である丹羽氏春(勘兵衛)によって創建されたと伝えられています。その後、天和3年(1683年）に丹羽氏右(権兵衛)によって再建されました。しかし、正保2年(1645年)の村絵図に武並神社が記載されているため、創建は万治2年以前であると考えられています。

重箱獅子

例祭では、山車や笹踊り、狂言、そして重箱獅子が奉納されます。特に重箱獅子は、徳川家康が武田氏との戦いで敗れて逃げてきた際に、村人が重箱を頭に載せて獅子舞の真似をしたのが始まりという言い伝えがあり、恵那市の有形民俗文化財に指定されています。

恵那市三郷町佐々良木の武並神社

佐々良木の武並神社は、慶長4年（1599年）に足立新五郎によって勧請されたとされています。

祭神

大己貴神（おおなむちのみこと）
誉田別命（ほんだわけのみこと）
少彦名命（すくなひこなのみこと）

歴史

当初は足立氏が氏神を祀っていたが、岩村城主の命により武並大権現を合祀するようになったと伝えられています。万治元年（1658年）に再建されました。かつては別当寺として真言宗の南陽山神護寺がありましたが、明治初年に廃寺となりました。例祭は10月第二日曜日に行われます。

恵那市武並町竹折の武並神社

竹折の武並神社は、建武2年(1335年)に岩村城主の命により創建されたと伝えられています。

祭神

大己貴神（おおなむちのみこと）
誉田別命（ほんだわけのみこと）
少彦名命（すくなひこなのみこと）

歴史

慶安3年(1650年)に市川源太郎らによって再建されました。境内には、寛文11年(1671年)に創立された白山神社と、竹折の武並神社と同じ由緒を持つ神明神社があります。

恵那市武並町藤の武並宮

藤の武並宮は、村人から氏神として「武並宮」と呼ばれています。

祭神

大己貴神（おおなむちのみこと）
誉田別命（ほんだわけのみこと）
少彦名命（すくなひこなのみこと）

歴史

岩村城主の命により建武2年(1335年)に創建され、天正15年(1587年)に葺替、享保19年(1734年)に再建されました。境内には、神明社と白山社があります。

恵那市長島町久須見の武並神社

久須見の武並神社は、拝殿が舞台造りとなっているのが特徴です。

祭神

大己貴神（おおなむちのみこと）
誉田別命（ほんだわけのみこと）
* 少彦名命（すくなひこなのみこと）

歴史

創建時期は不明ですが、寛永11年(1634年)に再興されたと伝わります。明治の神仏分離令が出るまでは、別当寺の和合院が祭事を務めていました。

まとめ

恵那市には、それぞれに歴史と特徴を持つ複数の武並神社が存在します。これらの神社は、地域の人々の信仰の中心として、今日まで大切に守り継がれてきました。この記事を通して、武並神社の魅力を感じていただければ幸いです。

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