長奉送使

長奉送使（ちょうぶそうし）

長奉送使とは、日本の律令制度において、伊勢斎宮に任命された斎王が伊勢国へ赴く「群行」の際に、斎王を伊勢まで送り届けることを任務とした官僚のことです。単に「長送使」とも呼ばれ、『延喜斎宮式』には「監送使」という記述も見られます。

起源と変遷

「長奉送使」という語が初めて確認できるのは、仁寿2年（852年）の晏子内親王の群行において、安倍安仁と橘海雄らが任命された記録です（『文徳天皇実録』）。しかし、『日本後紀』には、それ以前の延暦18年（799年）の布勢内親王の群行の際に、中臣王と藤原乙叡が斎王を送ったという記述があります。このことから、群行の制度が成立した当初から長奉送使が存在し、遥か伊勢まで送り届けることから「長」奉送使と称されたと考えられています。

構成

『斎宮式』によれば、長奉送使は参議または中納言を長とし、弁と史、そして六位以下の官人各1人ずつの計4人で構成されていました。『西宮記』では、中納言もしくは参議に、弁と史、中務丞の各1人の計4人とされています。つまり、参議もしくは中納言を筆頭に、弁、史、そして六位以下で中務丞を務める者によって構成されていたと考えられます。

任務と権限

群行に際しては、長奉送使には薬剤12剤が支給されました（『延喜典薬寮式』）。また、『江家次第』には、道中で不法な行為に遭遇した場合、それを糾弾する権限が付与されていたと記されています。これは、斎王の安全を確保し、群行を円滑に進めるための措置と考えられます。

任務終了後

長奉送使は、任務を終えると斎宮寮において饗宴が催され、禄を賜りました。これは、任務の労をねぎらい、その功績を称えるためのものであったと考えられます。

参考文献

所功「長奉送使」（『国史大辞典』、吉川弘文館、1988年 ISBN 4-642-00509-9）
福島昭治「長奉送使」（『平安時代史事典』、角川書店、1994年 ISBN 9784040317007）

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