長尾景誠

長尾 景誠

戦国時代に活躍した武将、長尾景誠（ながお かげのぶ）は、上野国（現在の群馬県）を拠点とした山内上杉家の家臣であり、白井長尾氏の七代当主として白井城を治めていました。

生涯の始まり

景誠は永正4年（1507年）に、白井長尾氏の当主である長尾景英の嫡男として生まれました。母については複数の説があり、通説では上野国の有力な国衆である長野業正の姉とされています。しかし、別の説では母は長尾景人の娘であり、長野業正の姉は景誠の正室であったとする見方もあります。この長野氏との関係は深く、後に長野業正の長男である吉業が、景誠の娘を妻に迎えたとされています。これは白井長尾氏と箕輪長野氏の間に姻戚関係が構築されていたことを示唆しています。

家督相続と反抗の試み

父である景英が病に倒れ亡くなる直前の大永4年（1524年）頃、景誠は家督を相続し、白井城主となりました。当時の関東地方は、古河公方や関東管領である山内上杉家を中心に複雑な勢力争いが展開されていました。景誠は、同じ長尾氏の一族である総社長尾氏の長尾顕景や、越後国の守護代として力をつけていた長尾為景といった有力者と軍事的な連携を深め、主家である山内上杉家に対して反抗する姿勢を示しました。これは、当時の山内上杉家の権威低下や内部対立に乗じた動きであったと考えられます。

長野氏との関係変化

しかし、山内上杉家の影響下にある上野国の国衆、特に長野氏との関係は次第に変化していきます。景誠が山内上杉家への反抗を続ける中で、長野氏によって攻められる事態となりました。窮地に陥った景誠は、かつてから姻戚関係にあった長野氏と和睦し、今度は長野氏の支援を受ける側となりました。この外交方針の転換は、当時の厳しい情勢下で白井長尾氏が存続を図るための選択であったと言えるでしょう。

短い生涯とその後

景誠の生涯は短いものでした。大永8年（1528年）、家督を継いでわずか4年ほどで、景誠は自身の家臣によって討たれてしまいます。この時期、山内上杉家では、上杉憲寛と上杉憲政の間で家督を巡る激しい争いが起こっており、景誠の死もこの内紛と何らかの形で関連があったと推測されています。有力な家臣による主君殺害という異常事態は、白井長尾氏の内部にも大きな混乱をもたらしたと考えられます。景誠の死後、白井長尾氏の当主の地位は、長野業正の斡旋によって、総社長尾家から迎えられた長尾憲景が継ぐこととなりました。これは、長野氏が白井長尾氏の後継者問題に深く関与し、影響力を行使したことを示しています。

長尾景誠の短い治世は、戦国時代の不安定な情勢の中で、中小の武士が生き残るために繰り返した同盟や反抗、そして内部の対立といった困難な選択と、突如として訪れる悲劇的な結末を物語っています。その死は、当時の関東、特に上野国における山内上杉家や周辺勢力の複雑な力関係の一端を映し出しています。

もう一度検索