長岡山の戦い

長岡山の戦い（戊辰戦争）

長岡山の戦いは、戊辰戦争中の秋田戦争において、庄内藩と桑名藩の連合軍と、薩摩藩を主力とする新政府軍が、出羽国長岡山（現在の山形県寒河江市）で激突した戦いです。

戦いの背景

慶応4年（1868年）9月19日、庄内藩は戦況の悪化により、すべての前線を放棄し本国への撤退を決定しました。寒河江に駐屯していた部隊も撤退の準備を進めていましたが、新潟方面で転戦してきた桑名・庄内軍に新政府軍が追いつき、長岡山で予期せぬ戦闘が勃発しました。

戦いの経緯

桑名藩兵の苦難

桑名藩主・松平定敬は、京都所司代として、兄である会津藩主・松平容保とともに京都の警護を担当していました。しかし、大政奉還により徳川幕府が倒れると、両藩は帰藩を命じられます。桑名城はすでに薩摩・長州軍に包囲されており、帰還することができませんでした。そのため、桑名藩兵は会津藩を頼り、海路で越後へ向かい、会津戦争に参戦しました。会津藩主・容保は、定敬に会津との運命を共にする覚悟をさせまいと、定敬を函館へと向かわせ、残された藩兵は庄内軍を頼って北上しました。

寒河江へ

米沢藩が新政府軍に降伏していたため、庄内軍が出羽国寒河江を警護していることを知った桑名藩の本隊（町田老之丞、立見鑑三郎率いる）は、8月25日に塩川を出発。米沢で藩主・松平定敬に会おうとしましたが、米沢藩の降伏により鎮撫軍が峠を警備していたため、福島城へ向かうことになります。9月9日に土湯峠を越え、11日に福島城下に到着しますが、藩主には会えませんでした。その後、庄内藩士・中村七郎右衛門隊と合流し、庄内藩が進出していた寒河江へ向かい、13日に福島を出発。笹谷峠を越え、16日に山形城へ到着。さらに山形街道（寒河江街道）を北上し、19日に寒河江へ到着しました。庄内藩は三番・五番銃隊、桑名藩は神風隊を左沢（現在の西村山郡大江町左沢）に派遣し、寒河江には桑名藩の雷神隊・致人隊の二隊、約300人が宿営しました。

長岡山の激戦

9月18日の朝、米沢藩主・上杉茂憲率いる米沢兵を先鋒とする新政府軍（参謀：黒田清隆、総督：西郷隆盛）が鶴岡城攻略のため進軍を開始。20日の払暁、寒河江に到達します。濃霧の中、桑名兵と庄内兵は朝食中に新政府軍の奇襲を受けました。土地勘のある庄内兵は、すぐに西北の長岡山へ撤退。桑名兵は立見鑑三郎の指揮のもと沼川沿いに陣を敷きましたが、新政府軍の圧倒的な攻撃により損害が増加し、霧の中で唯一視認できる長岡山へと撤退、庄内隊と合流し守備戦線を構築しました。しかし、霧が晴れると新政府軍の猛攻が再開され、午後には包囲されるに至ります。庄内・桑名兵は包囲網を突破し、北西の白岩方面へ脱出しました。

左沢からの援軍

左沢にいた桑名藩の神風隊が援軍として到着し、寒河江川に架かる臥龍橋を挟んで約2時間銃撃戦を展開しましたが、退路を断たれることを恐れ、銅山越の山道を通り、夜間行軍で肘折温泉（現在の最上郡大蔵村肘折）へ撤退、庄内藩領内へと逃れました。

庄内藩の降伏

9月20日の夜、西郷隆盛と黒田清隆は白岩に宿泊。翌21日に慈恩寺を経由して谷地へ入り宿泊。22日に谷地を出て西部街道を経て新庄方面へ向かいました。西郷・黒田と別れた米沢藩主力の別働隊は海味（現在の西川町海味）に参謀局（本部）を置き、23日に米沢藩・薩摩藩の部隊が志津（現在の西川町志津）に進軍し庄内軍と対峙しましたが、戦闘は起こりませんでした。米沢藩が庄内藩に和睦を勧める使者を派遣し、23日、庄内藩の使者が米沢藩の先導で海味へ到着、参謀局に降伏謝罪の嘆願書を提出しました。25日には古口（現在の最上郡戸沢村古口）の鎮撫軍本営で参謀・黒田清隆に面会し、降伏を申し出ました。その後、西郷隆盛・黒田清隆率いる鎮撫軍は鶴岡城に入城しました。

一方、鎮撫軍の先鋒を命じられていた米沢藩主・上杉茂憲は、23日に後衛を志津に残し本隊を撤退させました。

戦いの痕跡

戦後、桑名藩士の遺体は放置されていましたが、戦場近くの陽春院（寒河江市）の住職が荼毘に付し、陽春院の一角には桑名藩士20名を祀る墓碑が建立されています。

参考文献

『三百藩戊辰戦争事典』人物往来社、2000年
『山形の歴史散歩道』山川出版社、1993年
* 『西川町史』

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