長崎府

長崎府：明治維新期の地方行政機構

1868年（明治元年）、江戸時代の長崎奉行所は廃止され、新たな行政機関として長崎府が誕生しました。本稿では、長崎府の設置から長崎県への改組に至るまでの歴史的経緯を詳細に解説します。

明治政府による長崎府設置

明治政府は、幕府の支配機構であった天領を没収する方針を打ち出しました。これに伴い、最後の長崎奉行であった河津祐邦は江戸へと去り、旧長崎奉行所西役所は一時的に「長崎会議所」と改称され、各藩による合議制で治安維持にあたりました。

その後、新政府は民政機関として「長崎裁判所」を設置。七卿落ちの一人である澤宣嘉を九州鎮撫使兼外国事務総督に任命し、長崎裁判所総督を兼任させました。大村丹後守が長崎取締として澤宣嘉を補佐し、警備を担当しました。長崎会議所は廃止され、長崎裁判所が正式に発足すると、同時に九州鎮撫長崎総督府が設置されました。この総督府は、九州全域の34藩を管轄下に置く広大な権限を持つものでした。

長崎裁判所から長崎府へ

長崎裁判所は、肥後国天草郡に富岡県、豊後国日田郡に日田[[県]]を設置するなど、周辺地域の行政にも関与していました。その後、長崎裁判所は「長崎府」と改称され、澤宣嘉は知府事（後に府知事に改称）に就任しました。長崎府役所は、旧長崎奉行立山役所に移転し、「長崎府庁」となりました。

府の管轄区域も変更されました。天草県は廃止され、長崎府に復帰し、富岡出張所が設置されました。また、福岡[[藩]]預り地であった肥前国彼杵郡浦上村も長崎府の管轄下に入りました。澤宣嘉は諏訪神事の改革を行い、華美を禁止する令を発布、奉納踊りを廃止しました。警察の前身となる振遠隊（旧遊撃隊）の改編も行われました。

長崎県への改組

1869年（明治2年）、澤宣嘉は参与に任命され上京。長崎府は「長崎県」へと改組され、判事の野村盛秀が初代知事に就任しました。わずか1年余りの短い期間で、長崎府は明治政府の地方行政機構改革の中で、長崎県へと移行していったのです。この改組は、明治政府による新たな地方行政システム構築の一環として位置付けることができます。

まとめ

長崎府は、明治維新期の混乱期において、短期間ながらも重要な役割を果たした地方行政機関でした。長崎奉行所から長崎府、そして長崎県へと続く歴史は、明治政府の地方行政改革の過程を理解する上で重要な事例と言えます。長崎府の変遷を辿ることで、明治維新期の社会情勢や行政機構の変容をより深く理解することができるでしょう。

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