長崎通常

長崎通常（ながさき みちつね）は、安土桃山時代に薩摩国島津氏に仕えた武将です。通称は六郎左衛門、諱は常通とも伝えられています。父は長崎兵部少輔で、子に長崎通泰がいます。

通常は、島津氏の家臣団である伊集院衆の一員として、市来（現在の鹿児島県いちき串木野市）に居住していました。文禄4年（1595年）、主君である島津義久が豊臣秀吉によって強制的に隠居させられ、富隈城に移ると、通常もこれに従い富隈へ移りました。その後、慶長の役に参加し、泗川の戦いで武功を上げました。

慶長3年（1598年）、豊臣秀吉の死去に伴い、日本軍の撤退が決定しました。露梁海戦を経て多くの将兵が無事に脱出する中、島津勢の樺山久高ら500余名が潮流に流され、南海島の南海倭城に籠らざるを得ない状況に陥りました。敵船に包囲される絶望的な状況の中、島津義弘は伊勢貞昌、有馬重純、鮫島宗俊、五代友泰らを派遣し、救援を試みます。

貞昌らは小舟で敵船の間を縫うようにして久高らの元へ辿り着き、500余名を興善島へ密かに脱出させる作戦を立案。通常は、深野重張、平田平蔵らと共にこの脱出作戦の舟奉行を任されました。しかし、脱出に使用された舟は一艘に4～6人程度しか乗れない小舟が3艘のみであり、何度も往復を繰り返さなければなりませんでした。その最中、通常と深野重張は、舟を使って釜山浦へ逃亡したのです。結局、残った一艘の舟が往復を続け、全員の脱出を成功させました。

その後、日本への帰路の途中、島津勢は壱岐国風本で、通常と重張を捜し出しました。『本藩人物誌』によれば、両名は鮫島宗俊の検視のもとで切腹したとされています。一方、『征韓録』では、首を刎ねられた（斬首刑）とされています。通常が所有していた60石の知行は没収され、子である通泰は、長崎の姓を憚り、一時的に旧井（うすい）氏を名乗りました。

長崎通常は、戦国時代の動乱の中で、主君に忠義を尽くす一方で、自身の保身のために逃亡するという、複雑な側面を持つ人物だったと言えるでしょう。彼の行動は、当時の武将たちの生き様を映し出す一例として、後世に語り継がれています。

参考文献
『本藩人物誌』 鹿児島県史料集（13）（鹿児島県史料刊行委員会）
『戦国史料叢書6 島津史料集』「征韓録」 （人物往来社 1966年）

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