長征12号

長征12号ロケット

長征12号（中国語: 长征十二号运载火箭、英: Long March 12、略称: CZ-12またはLM-12）は、中華人民共和国の上海航天技術研究院（SAST）によって開発された、中型の打上げ用ロケットです。

このロケットは、衛星などのペイロード（搭載物）を宇宙へ運搬する能力に優れており、低軌道（LEO）には最大12トン、地上約700キロメートルの太陽同期軌道（SSO）には最大6トンの物資を投入することが可能です。その開発計画は、2024年2月26日に中国航天科技集団（CASC）が公表した年次報告書「ブルーブック」によって明らかになりました。

技術的特徴

長征12号は、2段式の液体燃料ロケットとして設計されています。推進剤には、一般的なロケット燃料であるケロシン（RP-1）と液体酸素が使用されています。

第1段: 4基のYF-100Kエンジンを搭載しています。このエンジンは1基あたり1250キロニュートン（kN）の推力を発生します。
第2段: 2基のYF-115エンジンを搭載しています。こちらは1基あたり180キロニュートンの推力を発生します。

ロケットの先端部分に取り付けられるフェアリング（ペイロード保護カバー）は、直径4.2メートルと5.2メートルの2種類から、打ち上げるペイロードのサイズに合わせて選択できます。また、このロケットの胴体部分には、中国の液体燃料ロケットとしては初めてとなる直径3.8メートルの構造が採用されており、これが高いペイロード能力の実現に寄与しています。

初打上げと運用

長征12号の記念すべき最初の打上げは、2024年11月30日14時25分（協定世界時、UTC）に実施されました。打上げ場所は、海南島の文昌市に新たに建設された商業ロケット専用の発射施設である海南商業航天発射場（Hainan International Commercial Aerospace Launch；HICAL）です。この打上げは、同発射場にとっても初めての商業ミッションとなりました。

初飛行には、「Satellite Internet Technology Test Satellite」と「Technology Test Satellite-3」という2基の技術試験衛星が搭載されました。この打上げで特に注目されたのは、新型のYF-100Kロケットエンジンが初めて実機に搭載されたことです。このエンジンは、将来的に中国が計画している月探査ミッションに使用される大型ロケット「長征10号」の主要な構成要素となる予定であり、今回の成功は将来の宇宙開発に向けた重要な一歩となりました。

長征12号は、主に商業衛星の打上げ需要に応えるために開発されており、その高い性能と新しい商業発射場の活用により、中国の商業宇宙産業の発展を加速させることが期待されています。

将来計画：長征12号A（再使用型）

上海航天技術研究院（SAST）は、長征12号のさらなる発展形として、第1段ロケットの再使用を目指した長征12号A（CZ-12A）バージョンの開発も計画しています。

長征12号Aでは、エンジンにメタンと液体酸素を推進剤として使用することが想定されており、これらのエンジンは中国国内の商業メーカーから供給される見込みです。機体の再使用方式としては、垂直に離陸したロケットがミッション完了後に再び垂直に着陸する垂直離着陸（VTVL）方式の技術が検証されています。

その実証試験として、SASTは2025年1月19日、山東省海陽市にある東方航天港から、「Longxing II」と名付けられた試験機を打ち上げました。この試験機は、長征12号Aの第1段を模したもので、高度75キロメートルまでの上昇と、その後の垂直着陸による機体回収を目指すものでした。試験機は計画通り高度75キロメートルに到達し、垂直降下を行いましたが、試験終了後、SASTからの公式な成功発表はありませんでした。このことから、垂直着陸の試験は成功しなかったものと推測されています。

長征12号シリーズは、中国の宇宙輸送能力を強化し、特に成長が見込まれる商業宇宙分野における重要な役割を担うことが期待されています。

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