長江文明

長江文明の概説

長江文明（ちょうこうぶんめい）は、中国の長江流域において成立した古代文明の集まりです。黄河文明と並ぶこの文明は、紀元前14000年頃から紀元前1000年頃までの時期を含み、後の楚や呉、越などの文化の起源と見なされています。

発見の歴史

20世紀前半、黄河文明の重要な文化、仰韶文化が発見された後、中国文明の起源は黄河流域であるという考えが広まりました。しかし、1970年代に実施された発掘調査によって、浙江省の河姆渡遺跡が注目を浴びます。この遺跡は紀元前6000年から5000年頃のもので、稲作の跡が発見されました。稲作が行われていたことから、この地域の住居は高床式であったと考えられています。この発見は、中国文明の起源に対する従来の理解に大きな影響を及ぼしました。

さらに、遼河周辺地域で文明の痕跡も見つかり、長江流域、黄河流域、遼河流域が互いに影響し合いながら独自に発展してきたという見方が支持されるようになりました。

長江文明の特徴

長江文明は、稲作を中心とした農耕社会であることが特徴です。これは、主に畑作を基盤とした黄河文明と大きく異なります。長江中流域からの稲作の起源が確認でき、ここが日本の稲作の源流とも見なされています。特に、屈家嶺文化（紀元前3000年頃 - 紀元前2500年頃）や良渚文化（紀元前3300年頃 - 紀元前2200年頃）が最盛期とされています。

また、河姆渡遺跡からは玉器や漆器が出土しており、呉城文化（紀元前1400年頃 - 紀元前1000年頃）からは初期の磁器が発見されています。これらの文物は中国の文化において重要な役割を果たしており、楚・呉・越といった後世の文化と関連があると考えられています。

四川文明

一方、四川盆地では長らく文明の発見がなかったものの、1986年に三星堆遺跡が発見されると大きな注目を集めました。この遺跡では独特な青銅器が出土し、古代蜀国の存在が示唆されます。また、三星堆文化からは奇妙な仮面や装飾品が見つかり、当時の社会構造や信仰がうかがえます。

継承者と文化の影響

長江文明を形成し、受け継いでいる具体的な集団は明確ではありませんが、楚・呉・越がその主要な後継とされています。また、現在の四川省に住むイ族が長江文明の末裔と考えられることもあります。彼らの文化には古代からの儀式が含まれており、長江流域に起源を持つとされる要素が見受けられます。

出土資料と今後の研究

長江文明や関連する四川文明の出土資料は豊富であるものの、体系的に解明されていない部分が多いのが現状です。文字の発見はされていませんが、文字に類似した記号が発見され、甲骨文字よりも古い可能性が指摘されることもあります。

今後の研究が進むことで、長江文明の全貌がより明らかになることが期待されています。

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