長生

長生（ちょうせい）とは

囲碁における「長生」とは、対局中に現れる特殊な形であり、死活に関わる局面で同一の盤面が繰り返し出現する状態を指します。この名称は、中国の長生殿での対局中にこの形が現れたことに由来します。

長生のルール

現代の日本ルールでは、長生が発生し、対局者双方がその形を譲らない場合、その対局は無勝負となります。一方で、中国ルールでは「超コウルール」という同形反復を禁じるルールが適用されるため、長生は発生せず、最終的に石の生き死にが決定されます。

長生の例

長生にはいくつかのパターンがありますが、代表的な例を以下に示します。

基本的な長生

[図：基本の長生の図を挿入]

上記の図において、黒がaの地点に打つと、白の石は五目ナカデで全滅してしまいます。しかし、白は同じ点に白1と打ち込むことで、黒の石を取って生きる妙手があります。この白1に対し、黒は2と打って白の石を抜き返すしかありません。その後、白は3と打ち返し、黒は▲の点に打って白の目を奪うと、最初の盤面に戻ります。

このまま打ち続けると、同一の局面が永遠に繰り返されます。このように、双方が譲らない場合、この対局は無勝負となります。

コウ付き長生

[図：コウ付き長生の図を挿入]

コウを伴う長生も存在します。上記の図では、白がaの地点に打つと、黒全体の死活に関わる本コウとなります。黒が1とコウを取ると、白は2とコウダテを利用できます。黒が3と取り返した後、白が4とコウを取り返すと、今度は黒が5と打ち込むことでコウダテとなります。白が6と取り返すと、最初の盤面に戻ります。これも双方が譲らない限り、永遠に繰り返されるため、無勝負となります。

プロの対局での出現例

長生は、実戦の対局で発生するケースは稀です。しかし、過去には以下のような事例が確認されています。

1993年9月23日： 本因坊リーグの林海峰名誉天元 - 小松英樹八段戦で、終局間際にコウ付き長生が発生し、無勝負となりました。この対局では、打ち直しは行われず、リーグ戦は半星扱いとなりました。
2009年9月14日： 富士通杯予選Bの王銘琬九段 - 内田修平三段戦でコウ付き長生が発生し、同日の打ち直しで王九段が勝利しました。
2013年6月29日： 韓国のKB国民銀行囲碁リーグの安成浚四段 - 崔哲瀚九段戦で長生が発生。規定により再対局は行われず、89手で引き分けとなりました。この事例は、韓国初の長生事例であり、日本以外のプロ組織による公式戦で初めて長生が発生したケースでもありました。また、プロの対局でコウが関係しない長生が発生した初のケースでもありました。

モニュメント

日本棋院の最寄り駅である市ケ谷駅の改札付近には、2010年の改装時に、囲碁の古典「囲碁発陽論」に収録された詰碁の問題を題材としたモザイクアートが設置されています。このモザイクアートは、長生をテーマにしており、長生が永遠に繰り返されることから、長寿につながる縁起の良いものとして選ばれました。

まとめ

長生は囲碁における特殊な局面であり、その発生は稀ですが、対局のルールや歴史を理解する上で重要な要素です。特に、プロの対局で長生が発生した事例は、囲碁ファンにとって興味深い話題となっています。

関連情報

引き分け: 囲碁における引き分けに関する情報。

もう一度検索