長篠村
愛知県南設楽郡に、かつて長篠村という自治体が存在しました。この村は、豊川とその支流である宇連川に沿った地域を範囲としていました。明治時代の町村制施行により1889年（明治22年）に誕生しましたが、昭和の大合併の一環として1956年（昭和31年）に周辺の村と合併し鳳来町の一部となり、村としての歴史を終えました。その後、旧村域の一部は隣接する新城町に編入されましたが、2005年（平成17年）に鳳来町全体が新城市に編入されたため、現在ではかつての長篠村の全域が新城市の一部となっています。
長篠村が行政村として成立する前、江戸時代初頭にあたる慶長年間には、現在の村域には14の村が点在していました。これらの村はいずれも三河国設楽郡に属し、慶長5年（1600年）以降は旧長篠村を含む3村が幕府直轄領、慶長7年（1602年）以降は他の11村が鳳来寺領となっていました。特に、旧長篠村は元禄11年（1698年）に幕府領から旗本一色氏の知行地へと変更されています。また、同じ元禄11年には、鳳来寺領内で新たに槙原新田が開墾されました。
明治時代に入ると、これらの村は再編・統合され、1878年（明治11年）までには5つの村（長篠村、横川村、富栄村、富保村、豊岡村）に整理されました。同年、設楽郡は南北に分けられましたが、これらの村はすべて南設楽郡に属することになります。1889年（明治22年）、町村制の施行に伴い、これら5つの村が合併し、新たな「長篠村」が発足しました。
村はその後、大きな変更なく推移しましたが、1956年（昭和31年）4月1日、南設楽郡鳳来寺村および八名郡大野町、七郷村と合併して鳳来町の一部となり、消滅しました。さらに同年9月30日には、鳳来町の一部となった旧横山村域のうち、字北山を除く地域が隣接する新城町へ編入されています。2005年（平成17年）10月1日には、鳳来町が新城市、作手村と合併したことで、旧長篠村の全域が新城市の一部となりました。
歴史的な出来事としては、1921年（大正10年）に愛知県山林会が村内にあった御料林を天然保護林として保存するよう決議した記録も残っています。
長篠村の地形は、大部分が山地に占められており、平地は比較的少ない地域でした。村内を流れる豊川（寒狭川）やその支流である宇連川（三輪川）の沿岸には、比較的平坦な台地が形成されており、村の集落のほとんどはこの台地上に集中していました。
村内には5つの大字が設定されていました。これらは、1889年の村発足前に存在した5つの村（長篠、横川、富栄、富保、豊岡）を再編成したものです。豊川と宇連川の合流地点付近に「長篠」、その北側の豊川沿岸に「横川」、長篠の東側で宇連川右岸に「富栄」、富栄のさらに東側の宇連川右岸に「豊岡」、そして長篠の北の山間部に「富保」が位置していました。
1956年に鳳来町が発足した後もこれらの大字は引き継がれましたが、前述の通り横川の一部が新城町に編入されたため、鳳来町に残った横川はほぼ山林のみとなり、人口がいない地域となっていました。2005年に鳳来町が新城市に合併したことで、現在ではこれら5つの旧大字すべてが新城市の大字として存続しています。現在の新城市では、旧長篠村域の一部（長篠、富保、旧鳳来町域の横川）を含む地域が鳳来中部地域自治区とされています。
村内を通る主要な交通機関は鉄道でした。宇連川沿いに沿って、村の南西部から北東部にかけて、国鉄飯田線（元・鳳来寺鉄道）が1923年（大正12年）に開通しました。村域内には以下の6つの駅が設置されました。
長篠地区：長篠城駅、本長篠駅
富栄地区：三河大野駅
豊岡地区：湯谷駅（現在の湯谷温泉駅）、三河槙原駅、柿平駅
また、1929年（昭和4年）には、本長篠駅を起点として北設楽方面へ向かう田口鉄道が開業し、「富保」地区に三河大草駅が設けられました。
村内には、村立の小学校が2校と中学校が1校設置されていました。
長篠小学校（長篠所在）：1873年開校。1969年に乗本小学校と統合し鳳来中部小学校となり、旧長篠中学校跡地へ移転。
富栄小学校（富栄所在）：1875年開校。1976年に東陽小学校へ統合。
長篠中学校（長篠所在）：1947年開校。1968年から1971年にかけて周辺5中学校と統合し鳳来中学校となる。
郵便局については、「長篠」に長篠郵便局が1931年（昭和6年）に開局しました。また、「横川」にも1880年（明治13年）に横川郵便局が開局しましたが、1883年（明治16年）に廃止されています。
村内を流れる豊川には、現在も中部電力によって稼働している2つの水力発電所が建設されました。いずれも旧「横川」地区に位置しています。
新城水力発電所：1912年（明治45年）3月運転開始。
横川水力発電所：1922年（大正11年）2月運転開始。
長篠村域には、いくつかの名所や旧跡が存在します。
長篠城址（長篠）：戦国時代の「長篠の戦い」の舞台として知られる城跡。
医王寺（長篠）：長篠にある寺院。
* 湯谷温泉（豊岡）：温泉地として知られています。
これらの施設や名所は、かつての長篠村の歴史や文化を今に伝える存在となっています。
歴史
長篠村が行政村として成立する前、江戸時代初頭にあたる慶長年間には、現在の村域には14の村が点在していました。これらの村はいずれも三河国設楽郡に属し、慶長5年（1600年）以降は旧長篠村を含む3村が幕府直轄領、慶長7年（1602年）以降は他の11村が鳳来寺領となっていました。特に、旧長篠村は元禄11年（1698年）に幕府領から旗本一色氏の知行地へと変更されています。また、同じ元禄11年には、鳳来寺領内で新たに槙原新田が開墾されました。
明治時代に入ると、これらの村は再編・統合され、1878年（明治11年）までには5つの村（長篠村、横川村、富栄村、富保村、豊岡村）に整理されました。同年、設楽郡は南北に分けられましたが、これらの村はすべて南設楽郡に属することになります。1889年（明治22年）、町村制の施行に伴い、これら5つの村が合併し、新たな「長篠村」が発足しました。
村はその後、大きな変更なく推移しましたが、1956年（昭和31年）4月1日、南設楽郡鳳来寺村および八名郡大野町、七郷村と合併して鳳来町の一部となり、消滅しました。さらに同年9月30日には、鳳来町の一部となった旧横山村域のうち、字北山を除く地域が隣接する新城町へ編入されています。2005年（平成17年）10月1日には、鳳来町が新城市、作手村と合併したことで、旧長篠村の全域が新城市の一部となりました。
歴史的な出来事としては、1921年（大正10年）に愛知県山林会が村内にあった御料林を天然保護林として保存するよう決議した記録も残っています。
地理と行政地名
長篠村の地形は、大部分が山地に占められており、平地は比較的少ない地域でした。村内を流れる豊川（寒狭川）やその支流である宇連川（三輪川）の沿岸には、比較的平坦な台地が形成されており、村の集落のほとんどはこの台地上に集中していました。
村内には5つの大字が設定されていました。これらは、1889年の村発足前に存在した5つの村（長篠、横川、富栄、富保、豊岡）を再編成したものです。豊川と宇連川の合流地点付近に「長篠」、その北側の豊川沿岸に「横川」、長篠の東側で宇連川右岸に「富栄」、富栄のさらに東側の宇連川右岸に「豊岡」、そして長篠の北の山間部に「富保」が位置していました。
1956年に鳳来町が発足した後もこれらの大字は引き継がれましたが、前述の通り横川の一部が新城町に編入されたため、鳳来町に残った横川はほぼ山林のみとなり、人口がいない地域となっていました。2005年に鳳来町が新城市に合併したことで、現在ではこれら5つの旧大字すべてが新城市の大字として存続しています。現在の新城市では、旧長篠村域の一部（長篠、富保、旧鳳来町域の横川）を含む地域が鳳来中部地域自治区とされています。
交通
村内を通る主要な交通機関は鉄道でした。宇連川沿いに沿って、村の南西部から北東部にかけて、国鉄飯田線（元・鳳来寺鉄道）が1923年（大正12年）に開通しました。村域内には以下の6つの駅が設置されました。
長篠地区：長篠城駅、本長篠駅
富栄地区：三河大野駅
豊岡地区：湯谷駅（現在の湯谷温泉駅）、三河槙原駅、柿平駅
また、1929年（昭和4年）には、本長篠駅を起点として北設楽方面へ向かう田口鉄道が開業し、「富保」地区に三河大草駅が設けられました。
教育施設と郵便局
村内には、村立の小学校が2校と中学校が1校設置されていました。
長篠小学校（長篠所在）：1873年開校。1969年に乗本小学校と統合し鳳来中部小学校となり、旧長篠中学校跡地へ移転。
富栄小学校（富栄所在）：1875年開校。1976年に東陽小学校へ統合。
長篠中学校（長篠所在）：1947年開校。1968年から1971年にかけて周辺5中学校と統合し鳳来中学校となる。
郵便局については、「長篠」に長篠郵便局が1931年（昭和6年）に開局しました。また、「横川」にも1880年（明治13年）に横川郵便局が開局しましたが、1883年（明治16年）に廃止されています。
発電所
村内を流れる豊川には、現在も中部電力によって稼働している2つの水力発電所が建設されました。いずれも旧「横川」地区に位置しています。
新城水力発電所：1912年（明治45年）3月運転開始。
横川水力発電所：1922年（大正11年）2月運転開始。
名所・旧跡
長篠村域には、いくつかの名所や旧跡が存在します。
長篠城址（長篠）：戦国時代の「長篠の戦い」の舞台として知られる城跡。
医王寺（長篠）：長篠にある寺院。
* 湯谷温泉（豊岡）：温泉地として知られています。
これらの施設や名所は、かつての長篠村の歴史や文化を今に伝える存在となっています。
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