長谷川匡俊

長谷川 匡俊（はせがわ まさとし）は、1943年2月28日に東京都豊島区で生まれた日本の仏教学者です。また、教育者として学校法人大乗淑徳学園の運営に長らく携わり、同学園の理事長や淑徳大学の学長などを務めました。

淑徳大学の創設者である長谷川良信の次男にあたり、前理事長の長谷川良昭は兄です。学園創立者の思想を受け継ぎつつ、教育・研究活動を展開しました。

学問の道は明治大学大学院文学研究科で始まり、1967年に修士課程を修了しました。その後、研究者としてのキャリアを積み、2004年には大正大学より文学博士の学位を授与されています。博士論文のテーマは『近世の念仏聖無能と民衆』であり、近世日本の仏教、特に浄土宗における念仏者の社会的な役割や民衆との関わりに深く光を当てたものです。

淑徳大学においては、社会福祉学部の助教授、教授として教鞭を執り、多くの学生を指導しました。教育者としての手腕を認められ、同学の学長に就任。さらに、学校法人大乗淑徳学園の理事を経て、2002年には理事長に就任し、学園全体の運営と発展に貢献しました。教育機関での要職を歴任する傍ら、仏教研究にも精力的に取り組み、浄土宗総合研究所の客員教授としても活動しました。また、長谷川仏教文化研究所の所長として、仏教文化の研究振興にも努めています。宗教者としては、浄土宗大巌寺の住職も務めており、幅広い顔を持つ人物です。

その専門分野は、日本の仏教史と日本の社会福祉史です。特に、近世から近代にかけての仏教が社会に果たした役割や、仏教思想が社会福祉の発展にどのように影響を与えたかについて、学際的な視点から研究を進めてきました。

長谷川匡俊氏は、これらの研究成果を数多くの著作として発表しています。代表的なものとしては、博士論文を基にした『近世の念仏聖無能と民衆』や、父・長谷川良信の生涯と思想を掘り下げた『トゥギャザーウィズヒム 長谷川良信の生涯』、『長谷川良信』などがあります。専門分野に関する著書には、『近世念仏者集団の行動と思想 浄土宗の場合』、『近世浄土宗の信仰と教化』、『宗教福祉論』、『近世の地方寺院と庶民信仰』、『念仏者の福祉思想と実践 近世から現代にいたる浄土宗僧の系譜』などがあり、その研究の深さと広がりを示しています。

また、様々なテーマでの編纂や共著にも関わっており、社会事業史や近代仏教、ボランティア、老いと死といった、現代社会にも通じる課題について、仏教や福祉の視点から考察を加えています。

『近世念仏者集団の行動と思想 浄土宗の場合』評論社 1980
『近世浄土宗の信仰と教化』渓水社 1988
『トゥギャザーウィズヒム 長谷川良信の生涯』新人物往来社 1992
『長谷川良信』大空社 1999
『宗教福祉論』医歯薬出版 2002
『近世の念仏聖無能と民衆』吉川弘文館 2003
『長谷川良信のブラジル開教 その理念と実践』大巌寺文化苑出版部 2003
『近世の地方寺院と庶民信仰』岩田書院 2007
『支え合う社会に 宗教と福祉と教育と』高陵社書店 2011
『念仏者の福祉思想と実践 近世から現代にいたる浄土宗僧の系譜』法藏館 2011

主な編纂・共著

『千葉県社会事業史年表 1』千葉県社会事業史研究会 1977
『近代浄土宗の社会事業 人とその実践』相川書房 1994
『長谷川良信語録』大乗淑徳学園附置長谷川仏教文化研究所 1998
『日本仏教福祉概論 近代仏教を中心に』池田英俊,芹川博通共編 雄山閣出版 1999
『日本仏教福祉思想史』吉田久一共著 法藏館 2001
『ボランティアの時代 「共生」の思想を考える』淑徳大学エクステンションセンター編 中央法規出版 2003
『今を生きて老いと死を生きる 大乗仏教の共生の教え』編集代表 淑徳大学エクステンションセンター編 青娥書房 2004
『戦後仏教社会福祉事業史年表』法藏館 2007
『戦後仏教社会福祉事業の歴史』法藏館 2007
『与えあうかかわりをめざして 福祉の役わり・福祉のこころ』阿部志郎,濱野一郎共著 聖学院大学出版会 2009

長谷川氏は、仏教学者として、教育者として、そして宗教者として、多角的な視点から社会や人間のあり方を見つめ、その知見を発信し続けている人物です。

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