閃光 (アルバム)

アルバム『閃光』の詳細

『閃光』（せんこう）は、1989年にリリースされたアンダーソン・ブルーフォード・ウェイクマン・ハウ（ABWH）の唯一のスタジオ・アルバムです。メンバーは、イエスの創設メンバーであったジョン・アンダーソン（ボーカル）、ビル・ブルーフォード（ドラム）、リック・ウェイクマン（キーボード）、スティーヴ・ハウ（ギター）という黄金のラインナップで構成されています。このアルバムは、1970年代のイエスの音楽スタイルを追求する新たな試みを象徴しています。

結成の背景

1987年、イエスは『ビッグ・ジェネレイター』を発表。その後、ジョン・アンダーソンはバンドの方向性に不満を抱き、脱退を決意します。アンダーソンは、再び1970年代のサウンドを復活させるため、自らの音楽仲間であったブルーフォード、ウェイクマン、ハウを招集しました。しかし、イエスの権利を持つクリス・スクワイアはこれを拒否し、アンダーソンたちがイエスの名を使用することを許可しませんでした。そのため、グループ名には彼らの名字を使うことになりました。

この経緯は、日本盤CDのオビやライナー・ノーツに詳しく記載され、1988年夏、アンダーソンがギリシャでの休暇から戻った際にABWHの設立に至るプロセスが記されていました。さらに、1989年に発表されたビデオ『イン・ザ・ビッグ・ドリーム』にも、メンバーたちの口からその過程が語られています。

音楽的内容

『閃光』の音楽には、過去のイエスの特性が色濃く反映されています。ハウの鮮やかなギターソロや、ウェイクマンのアナログシンセサイザーによる音色が特徴的である一方、録音技術や使用された機材の進化により、1970年代とは異なる印象を与えています。特に、スクワイアのリッケンバッカーに代わって参加したトニー・レヴィンのベースは独特のサウンドを形成し、全体の構造に変化をもたらしました。

制作過程では、事前にアンダーソンとクリス・キムゼイがプログラミングした音源が基礎となり、他のメンバーがスタジオに順次集まって録音を行いました。特に、キーボードパートの多くは、ウェイクマンが参加する前にマット・クリフォードによって録音され、彼の演奏が後からウェイクマンのものに差し替えられることが多かったです。たとえば、「TEAKBOIS」では、クリフォードによる金管楽器のサンプリング音がそのまま使用されています。ブルーフォードのドラムパートも、録音されたラフな演奏がアンダーソンとキムゼイによって再構築され、最終的にブルーフォードに確認を取った上で演奏されるという手法が取られました。

このアルバムには、ヴァンゲリスやジェフ・ダウンズといった著名なアーティストも共作者として名を連ねています。

収録曲

このアルバムには、以下のようなトラックが含まれています。

- テーマ (i)サウンド (ii)セカンド・アテンション (iii)ソウル・ウォーリアー
- フィスト・オブ・ファイアー
- ブラザー・オブ・マイン (i)ビッグ・ドリーム (ii)ナッシング・キャン・カム・ビトゥイーン・アス (iii)ロング・ロスト・ブラザー・オブ・マイン
- バースライト
- ザ・ミーティング
- クァルテット (i)アイ・ワナ・ラーン (ii)シー・ギヴス・ミー・ラヴ (iii)フー・ワス・ザ・ファースト (iv)アイム・アライヴ
- TEAKBOIS
- オーダー・オブ・ザ・ユニバース (i)オーダー・テーマ (ii)ロック・ギヴス・カリッジ (iii)イッツ・ソー・ハード・トゥ・グロウ (iv)ザ・ユニバース
- レッツ・プリテンド

リイシューと特別トラック

2010年には、シングルやライブ・バージョン、デモ・バージョンなどのボーナストラックを追加したCD2枚組がリニューアルされ、Gonzo Multimediaからリリースされました。これにより、元のアルバムと新しいコンテンツが集約され、ファンにとって価値のある作品となりました。

メンバーとサポート陣

このアルバムの主要メンバーは以下の通りです。

- ジョン・アンダーソン (リード・ボーカル、プロデュース)
- ビル・ブルーフォード (ドラム)
- リック・ウェイクマン (キーボード)
- スティーヴ・ハウ (ギター)

サポートメンバーとしては、トニー・レヴィン（ベース、チャップマン・スティック、ボーカル）、マット・クリフォード（キーボード、プログラミング、ボーカル）などが参加しています。

特記事項

特に「オーダー・オブ・ザ・ユニバース」の前奏部分は、テレビ朝日系報道番組『ザ・スクープ』のテーマ曲として長らく使用されていました。このアルバムは、時代を超えた音楽のコンセプトを新たに生み出した作品として、多くのリスナーに影響を与え続けています。

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