間質液

間質液（組織液・細胞間液）とは

間質液は、多細胞生物の組織において、個々の細胞を取り囲むように存在する液体です。「組織液」や「細胞間液」とも呼ばれます。これは、細胞外液と呼ばれる体液の一部であり、血管内を流れる血液やリンパ管内を流れるリンパ液以外の部分を指します。全身の組織に広く分布しており、成人では体重のおよそ15%、平均して11リットルもの間質液が体内に存在すると言われています。

重要な役割

間質液は、細胞と血液の間で行われる物質交換において極めて重要な仲介役を果たしています。血液によって運ばれてきた酸素や栄養素（タンパク質、糖類、脂肪酸など）は、まず毛細血管の壁を透過して間質液へと移行します。次に、これらの物質は間質液中を拡散し、組織の細胞に取り込まれます。逆に、細胞の代謝活動によって生じた老廃物や二酸化炭素は、細胞から間質液へと放出され、間質液を経て再び毛細血管へと吸収され、体外へ排泄される経路に乗ります。このように、間質液は細胞が生きて活動するために必要な物質を供給し、不要な物質を運び去る生命維持に不可欠な役割を担っています。

成分

間質液は、主に水で構成された水溶液であり、血液の血漿とよく似た成分を含んでいます。具体的には、タンパク質、アミノ酸、糖類、脂肪酸、ホルモン、神経伝達物質、電解質などが溶け込んでいます。また、細胞から排出された老廃物も含まれます。

ただし、血液の全ての成分が毛細血管壁を容易に通過できるわけではありません。例えば、赤血球や血小板、分子量の大きな血漿タンパク質の多くは、通常は血管の外に出にくい性質があります。そのため、間質液のタンパク質濃度は血漿よりも低くなっています。一方で、リンパ球など一部の白血球は間質液中にも見られます。炎症が起こると、血管壁の透過性が亢進するため、通常は透過しにくい成分（血小板や他の白血球など）も間質液へ移行しやすくなります。

組織の場所によって細胞の種類や活動が異なるため、間質液の成分も体の部位によって多少異なります。

生成と吸収のメカニズム

間質液は、毛細血管から血漿の一部が染み出すことで生成されます。このプロセスには、主に「静水圧」と「浸透圧（膠質浸透圧）」という二つの力が関わっています。

心臓のポンプ作用による血圧は、毛細血管内部に静水圧を生み出します。この静水圧は、毛細血管壁を通して水分や小さな溶質を血管外（間質液側）へ押し出す力として働きます。一方、血管内に比較的多く存在するタンパク質（特にアルブミン）などが作り出す膠質浸透圧は、血管外の水分を血管内へ引き戻す力として働きます。

毛細血管の場所によって、これらの力のバランスは異なります。動脈に近い側の毛細血管では、静水圧が膠質浸透圧よりも高いため、全体として水分や溶質が血管から間質液へと流れ出す向きが優位になります。静脈に近い側の毛細血管では、血圧が下がって静水圧が低下するため、相対的に膠質浸透圧の影響が強くなり、多くの水分や一部の溶質が間質液から血管内（静脈側）へと再吸収されます。

しかし、この毛細血管での再吸収だけでは、間質液中に流れ出した全ての水分や溶質、特に分子量の大きなタンパク質や細胞の破片などを完全に回収することはできません。この回収の役割を担うのが、リンパ系です。

循環とリンパ系

毛細血管で回収されきれなかった間質液、特にタンパク質や老廃物、細菌、ウイルス、異常細胞（癌細胞など）といった分子量の大きいものや異物は、リンパ管の末端にある開口部から取り込まれます。間質液がリンパ管に入ると「リンパ液」と呼ばれるようになります（海外では間質液とリンパ液を区別しないことも多いです）。

リンパ管に取り込まれた液体は、リンパ節を経由しながら体中を巡り、異物が除去されたり免疫応答が活性化されたりした後、最終的には静脈へと合流し、血液循環に戻されます。このように、間質液の循環は静脈系とリンパ系の連携によって成り立っています。

間質液の生成・吸収・回収のバランスが崩れると、組織に過剰な間質液が溜まり、「浮腫（むくみ）」として現れることがあります。例えば、心臓や腎臓の機能障害、リンパ管の閉塞などが原因で、特に重力の影響を受けやすい下肢などに浮腫が見られることがあります。

間質液は、細胞を取り巻く環境を一定に保ち、細胞が正常に機能するための基盤となる、生命維持に不可欠な体液なのです。

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