間部詮房

間部詮房：猿楽師から幕政を担った稀代の政治家

間部詮房は、江戸時代中期を代表する大名にして、幕政を主導した稀有な人物です。相模厚木藩主、上野高崎藩主、そして越後村上藩初代藩主と、重要な藩を歴任しました。さらに、側用人、老中格として、徳川家宣、家継の2代将軍に仕え、幕政の中枢に深く関与しました。

華麗なる出世の軌跡：猿楽師から幕臣へ

間部詮房は寛文6年(1666年)、甲府藩主・徳川綱重の家臣の子として生まれました。幼少期は猿楽師の弟子として過ごしましたが、運命の転機が訪れます。貞享元年(1684年)、綱豊(後の徳川家宣)の小姓に抜擢されたのです。この時、「間鍋」から「間部」に改名し、綱豊の信頼を得て、めきめきと出世の階段を駆け上がっていきます。甲府藩で用人となり、俸禄も加増され、家宣の江戸城西丸入りを機に幕臣となり、西丸奥番頭、西丸側衆と重要な地位に就きます。宝永3年(1706年)には若年寄格となり、相模国内で1万石の大名に。さらに、老中次席に昇格、その後、高崎5万石の領主となりました。猿楽師出身の大名が、ここまで出世を遂げた例は他にありません。

正徳の治と権力闘争：家宣・家継時代の幕政

家宣が将軍に就任すると、詮房は新井白石と共に、正徳の治を推進しました。家宣の側用人として絶大な権力を握り、幕政を主導しました。しかし、その権力は家宣への忠誠にのみ依拠しており、家宣の死後、幼少の徳川家継が将軍となると、門閥や反甲府派からの反発が強まりました。家継の早世と徳川吉宗の将軍就任により、詮房は失脚、高崎から越後村上への転封を余儀なくされます。これは、権力闘争の激しさ、そして政治基盤の脆弱性を示す出来事でした。

人物像と最期：忠義と能力

詮房は真面目で信義に厚い人物として知られていました。家宣には昼夜を問わず仕え、絶大な信頼を得ていました。新井白石も、詮房の優れた人品を高く評価しています。しかし、「三王外記」には、家宣の死後、月光院との密会を繰り返していたという記述があり、その真偽は定かではありません。享保5年(1720年)、55歳で亡くなりました。

間部家：続く家系

家督は実弟の詮言が継ぎ、間部家はその後、越前国鯖江藩5万石を経て明治維新を迎えました。華族令により子爵を授けられ、その歴史に幕を閉じました。

さまざまなメディアへの登場

間部詮房は、小説、映画、テレビドラマ、漫画など、さまざまなメディアで取り上げられています。これらの作品を通して、その生涯や人物像が再解釈され、現代に伝えられています。その存在は、歴史の重要な一断面を担うだけでなく、多くの人々の関心を惹きつけ、創作の源泉ともなっているのです。

参考文献

竹内誠（他）編『徳川幕臣人名辞典』東京堂出版、2010年
国史大辞典編集委員会『国史大辞典』第十三巻、吉川弘文館、1992年
* 間部家文書刊行会編『間部家文書』第一巻、1980年

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