関屋分水路

関屋分水路：新潟市を洪水から守る水の道

関屋分水路は、新潟県新潟市を流れる信濃川の分水路であり、大河津分水路と共に信濃川の二大分水路として知られています。信濃川の流量を調整し、洪水から新潟市を守ることを目的として建設されました。

関屋分水路の概要

関屋分水路は、信濃川河口から約10km上流の平島地区から分流し、関屋地区を通り、新潟砂丘を貫いて日本海へと注ぎます。全長は約1.8kmで、1972年8月10日に通水しました。計画高水流量は毎秒3200立方メートルです。分水路は上流からの土砂を受け止め、本流下流の新潟西港への土砂堆積を防ぎ、河口付近の海岸侵食対策にも貢献しています。

歴史

近代以前の計画

江戸時代には既に信濃川の流水量を調整する分水路の構想があり、享保年間には大河津分水路が計画されました。関屋分水路の構想も江戸時代後期から存在しましたが、新潟湊の反対などにより実現には至りませんでした。しかし、洪水対策として関屋掘割の建設を求める声は高まり、1869年には農民らが騒動を起こす事態となりました。

「関屋分水案」と「河口分流案」の対立

戦後、新潟港の機能強化と海岸浸食対策を検討する中で、「信濃川と新潟港を分離する関屋分水案」と「内港施設の拡充をはかる河口分流案」の2案が対立しました。新潟市議会は河口分流案に賛成しましたが、新潟県議会議員の柏原正雄は関屋分水案を主張し続けました。最終的には建設省が関屋分水案を支持し、1960年代に入って本格的な分水事業が検討されることになりました。

1964年に工事が着手されましたが、新潟地震の発生により一時中断されました。その後、建設省直轄事業として工事が再開され、1972年に通水に至りました。

競馬場移転

関屋分水路の建設にあたり、用地確保が大きな課題となりました。そこで、新潟県は関屋地区にあった新潟競馬場に着目し、競馬場用地を立ち退き住民の住居用地に充てることを構想しました。日本中央競馬会（JRA）との協議の末、競馬場は豊栄市笹山地区（現在の新潟市北区笹山）に移転し、跡地は住宅地として利用されることになりました。

現在、かつて「関屋競馬場」と呼ばれていた周辺の面影はほとんど残っていませんが、関分公園の石碑や越後線関屋駅近くの「競馬場踏切」にその名残を見ることができます。

分水路による地域区分と名称

関屋分水路の開削により、新潟市の信濃川下流左岸地域は「新潟島」と呼ばれるようになりました。また、新潟市が政令指定都市となった際には、関屋分水路が中央区と西区の境界となりました。

橋梁

関屋分水路には、以下の橋梁が架かっています。

新潟大堰橋
浜浦橋
堀割橋
有明大橋
越後線鉄道橋
関屋大橋

関連施設

関分記念公園：関屋分水路の建設を記念して整備された公園。展望台や銅像などが設置されています。
関屋分水資料館：建設工事の様子や、分水路が無い場合に発生しうる影響についてパネルで説明しています。

関屋分水路は、新潟市を洪水から守るだけでなく、地域開発や都市計画にも大きな影響を与えました。その歴史と役割を理解することは、新潟の街を知る上で不可欠と言えるでしょう。

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