関山和夫

関山 和夫

日本の民俗学および話芸研究の第一人者として知られる関山 和夫（せきやま かずお）は、1929年に愛知県で誕生し、2013年に83歳でその生涯を終えました。生家が浄土宗西山派の寺院であったことは、後の仏教説話や話芸研究への道に深く関わることになります。

経歴

関山は、旧制の一宮中学校を経て、1952年に大谷大学の国文学科を卒業しました。大学を卒業後、愛知県内の県立高校で教鞭を執りながら、研究活動にも精力的に取り組みました。その成果の一つとして、1964年に発表した著作『説教と話芸』が日本エッセイストクラブ賞を受賞。この頃から高等教育機関での教育にも携わるようになり、東海学園女子短期大学で助教授、後に教授を務めた後、佛教大学へと移りました。1976年には、大谷大学に提出した学位論文『説教の歴史的研究』によって文学博士号を取得。2000年に佛教大学を定年退職し、名誉教授の称号を得ました。その後は京都西山短期大学の学長として、教育界での貢献を続けました。彼の墓所は、愛知県江南市にある曼陀羅寺にあります。

研究内容と業績

関山和夫の研究の核心は、仏教の僧侶が民衆に向けて行った「説教」、特に節談説教を、日本の多様な話芸の重要な源流と位置づけたことにあります。この視点に基づき、彼は独自の芸能史論を展開しました。祭文、琵琶、浄瑠璃、浪花節といった語りものから、節談説教、絵解き、万歳、講談、そして落語に至るまで、「話す」ことによって成立する多岐にわたる芸能形態を、歴史的かつ多角的に分析・研究しました。「話芸」という言葉自体も、関山によって提唱され、定着していった概念であるとされています。

また、研究活動と並行して、落語の普及や振興にも尽力しました。単なる研究に留まらず、実際に落語の公演企画にも積極的に関わりました。特に、作家で落語にも造詣が深かった安藤鶴夫との交流は知られています。

関山は、1967年から2013年まで、名古屋で落語を聴く会「含笑長屋」を主宰しました。話芸そのものに対する真摯な姿勢と、商業的な興行とは一線を画す主催者としての高い倫理観は、多くの落語愛好家の共感を呼びました。1970年代には、関山を顧問として迎える形で、北関東から九州に至る各地に10以上の地方落語会が誕生しました。これらの会の中には、「かまくら落語会」「蒲郡落語を聴く会」「岐阜落語を聴く会」など、現在も活動を続けているものがあります。「熊本落語長屋」は一時休会しましたが、関山の精神を受け継ぎ、特別な記念例会を開催するなど、その影響力は今なお続いています。

受賞・栄典

関山の研究活動や著作は高く評価され、複数の賞を受賞しています。

1964年：『説教と話芸』で日本エッセイストクラブ賞を受賞。
1987年：『落語風俗帖』などの業績により、芸術選奨新人賞を受賞。

主な著書

関山和夫は数多くの著作を通じて、その研究成果を広く世に問いました。代表的な著書には以下のようなものがあります。

『説教と話芸』（青蛙房、1964年）
『説教の歴史的研究』（法蔵館、1973年）
『話芸の系譜 大衆話芸の歴史をさぐる』（創元社、1973年）
『説教の歴史 仏教と話芸』（岩波新書、1978年）
『落語風俗帳』（白水社、1985年）
『落語名人伝』（白水社、1986年）

これらの著作は、日本の芸能史、特に庶民文化と仏教との関わりから話芸の成り立ちを理解する上で、今日でも重要な文献とされています。

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