関東刑務所帰り

関東刑務所帰り

『関東刑務所帰り』は、1967年12月9日に封切られた日本の劇場用映画です。製作と配給は日活が手がけ、監督は武田一成が務めました。主演に高橋英樹を迎え、彼が演じる主人公の活躍を描く任侠アクション作品として公開されました。本作は、高橋英樹が主演した一連の任侠映画、通称『関東シリーズ』の第3作目に位置づけられています。

物語の背景とあらすじ

物語の始まりは、主人公である村瀬政吉が刑期を終え、社会へと戻るところから始まります。彼が新たな生活の地として選んだのは、とある漁師町でした。この町で、政吉はかつて世話になった一家のもとに身を寄せます。しかし、この平穏な漁師町には、悪辣な手段で支配を広げようとする別の勢力が存在していました。

その悪党一家は、政吉が草鞋を脱いだ一家の縄張りだけでなく、町の重要な経済基盤である鉄道荷役の権利、さらには操車場の所有権までも虎視眈々と狙っていました。彼らは自分たちの思い通りに事を運ぶため、町の伝統的な祭礼や人々が楽しみにしている夜店といった行事まで妨害し、住民に圧力をかけていきます。町の秩序が乱され、人々が苦しむ様子を目の当たりにした政吉は、かつての自分を支えてくれた人々のため、そして町の平和を守るため、この悪徳一家の横暴に対して敢然と立ち向かうことを決意します。持ち前の度胸と腕っぷしで、単身あるいは心強い味方を得て、権力と暴力で全てを支配しようとする敵に挑んでいくというのが本作の骨子となっています。

出演者たち

主人公、村瀬政吉を演じたのは、当時の日活アクションを牽引していたスター、高橋英樹です。彼の力強い演技が、出所した男の葛藤と正義感を体現しています。ヒロイン的な存在、岡井雪絵には山本陽子。そして、主人公の心強い味方となる素っ飛びの平次を和田浩治が演じ、物語に活気を与えています。敵対する悪徳一家の重要人物、河出の仙八には葉山良二、主人公が身を寄せる一家の人物か、あるいは理解者の一人として岡井忠蔵を大坂志郎が演じるなど、ベテランから若手まで、日活を代表する多くの俳優が顔を揃えています。その他にも、大砲安に平凡太郎、シカゴのジョーにE・H・エリックといった個性的なキャラクターが登場し、坂田石松役の岡崎二朗、久保刑事役の高品格、乱れ星の大五郎役の戸田皓久ら、物語に深みを与える多彩なキャストが出演しています。また、花村美乃役の浜川智子（浜かおる）、花枝役の南寿美子、丸吉の源二郎役の雪丘恵介など、脇を固める俳優陣も物語を彩っています。

製作に携わった人々

本作のメガホンを取ったのは武田一成監督です。脚本は甲斐久尊が担当し、物語の骨子とキャラクターに息吹を与えました。企画は岩井金男、音楽は小杉太一郎が手掛け、任侠映画らしい緊迫感や情感を盛り上げています。また、遊侠所作指導として笛田直一、擬斗として渡井嘉久雄（渡井嘉久夫）が参加し、本格的な立ち回りや任侠の世界観を作り上げています。刺青は河野弘が担当しました。

公開と反響

『関東刑務所帰り』は、1967年の年末興行として公開されました。同時上映作品は『愛は惜しみなく』でした。日活の任侠アクション路線が人気を博していた時期に製作された本作は、シリーズの一環としてファンに受け入れられました。高橋英樹の魅力と、分かりやすい勧善懲悪のストーリーテリングが融合し、娯楽作品としての魅力を発揮しました。

漁師町という舞台設定、そして悪党による具体的な権利争奪や祭礼妨害といった描写が、単なる抗争劇ではない、人々の生活に根ざしたドラマとして描かれている点が特徴です。正義のために立ち上がる主人公の姿は、当時の観客に爽快感を与えたことでしょう。

本作は、日活アクション映画の系譜においても、主演スターを中心に据えつつ、多彩な共演者と手堅いスタッフワークで製作された一例として記憶されています。

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