阿史那菴羅

阿史那菴羅（あしな あんら、拼音：āshǐnà ànluó、生没年不詳）は、6世紀後半の突厥の可汗であり、在位期間は短かったものの、突厥の歴史において重要な役割を果たしました。彼のソグド語による原音はマガ・ウムナ・カガンとされています。

生涯

581年、父である他鉢可汗が病に倒れ、その臨終の際に、子の菴羅に対し、後継者争いを避けるように遺言しました。具体的には、兄である木汗可汗が子の擁立を避け、自身を後継者とした経緯を語り、菴羅にも同様に大邏便を避けるように指示しました。しかし、他鉢可汗の死後、国人たちは大邏便を推すか、菴羅を推すかで意見が分かれました。大邏便の母の身分が低かった一方、菴羅の母は高貴な身分の出身であり、突厥の伝統では母の身分が重視されるため、後継者決定は難航しました。

そのような状況下で、乙息記可汗の子である爾伏可汗摂図が菴羅を支持しました。摂図は当時、有力な存在であり、国人たちは彼に遠慮して反論することができず、最終的に菴羅が可汗位を継承することに決定しました。しかし、可汗位を得られなかった大邏便は、菴羅に心服せず、度々使者を送って菴羅を侮辱しました。菴羅はこれを抑えることができず、最終的に可汗位を摂図に譲ることを決意しました。国人たちもまた、「四可汗（乙息記可汗・木汗可汗・他鉢可汗・褥但可汗）の子の中では摂図が最も賢い」と評価しており、摂図の即位を支持しました。摂図は正式に即位し、伊利倶盧設莫何始波羅可汗と号し、菴羅は独洛水に移り住み、第二可汗と称しました。

ブグト碑文の記述

『ブグト碑文』には、木汗可汗の死から他鉢可汗、そして菴羅可汗までの治世が刻まれています。この碑文において、他鉢可汗はマガ・タトパル・カガン（mγ't'tp'r x'γ'n）、菴羅可汗はマガ・ウムナ・カガン（mγ'wmn' x'γ'n）とソグド語で表記されています。碑文には、菴羅可汗が亡くなった父である他鉢可汗のために「偉大な法の石」を建立したことが記されています。この「偉大な法の石」とは、『ブグト碑文』そのものを指すとされています。阿史那菴羅の治世は短期間でしたが、この碑文を通じて、彼の存在と業績が後世に伝えられています。

まとめ

阿史那菴羅は、突厥の可汗として短期間在位し、その在位期間は内紛と権力闘争に翻弄されました。しかし、ブグト碑文にその名が刻まれていることからもわかるように、彼の存在は突厥史において無視できないものであり、当時の社会情勢や権力構造を理解する上で重要な手がかりとなります。

参考資料

『隋書』（列伝第四十九 北狄）
モンゴル国現存遺蹟・碑文調査研究報告 森安孝夫p122 - 125（『ブグト碑文』原文、英訳、和訳）

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