阿武松緑之助

阿武松 緑之助について

阿武松緑之助（おうのまつ みどりのすけ、1791年 - 1852年）は、石川県鳳珠郡能登町出身の大相撲力士で、歴史的な横綱の一人です。本名は佐々木姓で、多くの文献ではその名の次に「長吉」や「常吉」と記されているものの、単に佐々木姓のみの記載もあり、名の特定が難しいです。

生涯と来歴

彼は1791年に能登国七海村で生まれました。実家は農業を営む家でしたが、彼は若い頃から力自慢として知られており、力士の道を志しました。文化12年（1815年）に江戸に出て、四壁庵茂鳥の『わすれのこり』によると、コンニャク屋の下男をしていた時期に力士の夢を抱くようになったとされています。

1822年には入幕を果たし、翌年には小結位に昇進、その後も連続して地位を上げていきました。特に1828年には横綱に昇進します。これは、前の横綱である小野川喜三郎が引退してから約30年ぶりの快挙でした。彼はこの時点で歴代の横綱が鬼籍に入っており、唯一の存命横綱として注目を集めました。

横綱としての彼は、稲妻雷五郎と共に文政から天保の相撲人気を盛り上げ、天保6年には引退しましたが、一度も負け越すことはありませんでした。1851年12月に江戸で没し、後に深川浄心寺に埋葬されています。法号は常建院法鷲月山居士です。

四股名の由来と意義

彼の四股名「阿武松」は、萩の美しい景勝地「阿武の松原」に由来しています。現在、この名は相撲協会の年寄名跡の一つとして使われており、特別な意味を持つものとなっています。

人物像

温厚で義理堅く、情誼に厚い性格を持った彼は、取り口には慎重さが見られました。その取り口のスタイルは「待った」といったように、戦略を重視したものであり、「阿武松でもあるめぇし」といった江戸の流行言葉にもなりました。また、その体格は色白で赤が満ちた様子から「錦絵」と称されていました。

エピソードと伝説

落語や講談では、阿武松が非常に大食漢であったため、出世が遅れ、最終的には武隈部屋から破門されて故郷に帰れなくなり、自害を決意するという話が語られています。これは創作の要素が強く、実際には師匠の代変わりや抱え藩の変更が影響していたとされています。

また、彼が名を呼ばれる中で、婦人に人気の帯「小柳帯」とも関連があります。これは小柳という名を名乗っていた時期の名残です。二代目中村芝翫との交流もあり、彼の芸に阿武松が扮したことが評判を呼びました。

主な成績と業績

彼の幕内通算成績は142勝、31敗、24分、8預け、1無37休という素晴らしいもので、勝率は.821を誇ります。優勝相当成績も5回に達しています。

墓所と記念碑

彼の墓は東京都江東区の玉泉院墓地内にあり、1937年には故郷の石川県能登町七海に「横綱阿武松碑」が建立されました。高さ4.5メートル、幅2.4メートルの大きな碑です。

阿武松緑之助は、江戸時代の相撲界において重要な地位を占め、後の力士たちに多くの影響を与えた人物として、今なお語り継がれています。

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