阿部正与

阿部 正與の生涯と系譜

阿部正與（あべ まさとも）は、安土桃山時代から江戸時代前期にかけて活躍した武将で、清洲藩の家老を務め、後に尾張藩の家老となりました。彼は天正元年（1573年）、徳川家康の家臣である阿部正勝の三男として生まれました。兄には岩槻藩主の阿部正次と、旗本の阿部忠吉がいます。

初陣は1590年に行われた小田原征伐で、彼は松平康重隊の先鋒として参加しました。この戦いでは敵に囲まれながらも、仲間の助けを得て辛うじて生き延びることができました。その後、文禄元年（1592年）には、武蔵国忍城主となり、松平忠吉に仕官し700石を賜りました。

慶長5年（1600年）には関ヶ原の戦いで松平忠吉や井伊直政と共に戦功を上げ、その成果として3000石を与えられ、家老に任命されました。さらに、忠吉の昇進に伴い、彼自身も従五位下河内守に叙任され、知行地が増加されました。

慶長12年（1607年）に忠吉が亡くなった際、正與は徳川義直に仕官をし、同心頭としての役割を引き続き担いました。彼の任務の一部は忠吉の加増によって得た知行を失うことでしたが、慶長14年（1609年）には更に2000石の加増を受け、再び5000石に復しました。

その後も、正與は大坂の陣に参加し、尾張国北部を中心とした知行地を持つようになりました。元和3年（1617年）には他の大名にはない特権的地位として年寄に任命されます。正與は1640年にこの地位のまま68歳で亡くなり、旧主の松平忠吉が建立した菩提寺に葬られました。その後、彼の墓所は地域の小学校に転用されることとなります。

系譜

阿部正與の系譜も興味深い部分です。彼の父は阿部正勝であり、母は江原定次の娘でした。正與の兄弟の中で、正次は備後福山藩主となり、忠吉も陸奥棚倉藩主となったため、阿部家は大名家に連なる家系だったことがわかります。

正與の妻は清洲藩の家老である富永忠兼の娘であり、二人の間には数人の子供が生まれました。長男の正致は尾張藩の年寄に就任し、その後も家系は尾張藩の重要なポジションをキープしました。しかし、嫡男の正治は乱心のために所領を失うことになります。

その後、正治の娘婿である石川正光の三男・正寛が名跡を継承し、再び阿部姓を名乗ることとなります。正寛は家禄を増やし、尾張徳川家との繋がりを強化していきます。その後の阿部家は4000石の世禄が続き、幕末の当主である正傷は名古屋城に居を構えましたが、明治維新によって商人に転身しました。

正與の人生やその家系は、戦国時代から江戸時代にかけての日本の歴史を映し出すものとして、多くの教訓を含んでいると言えるでしょう。

もう一度検索