限界代替率

限界代替率（MRS）とは

限界代替率（MRS: Marginal Rate of Substitution）は、ミクロ経済学において重要な概念であり、消費者が2つの財の間でどのように交換を評価するかを示す指標です。具体的には、ある財の消費量を1単位増やしたときに、消費者の効用（満足度）を一定に保つためにもう一方の財の消費量をどれだけ減らす必要があるかを表します。

定義

2つの財XとYを考え、それぞれの消費量をx、yとします。このとき、財Xの限界代替率（MRSxy）は、xを1単位増加させたときに、効用を一定に保つために必要なyの減少量として定義されます。これは、X-Y平面上の無差別曲線の接線の傾きの絶対値に相当します。

数学的表現

効用関数をu(x, y)とすると、限界代替率は以下の式で表されます。


MRSxy = - (dy/dx) = (∂u/∂x) / (∂u/∂y)


ここで、∂u/∂xは財Xの限界効用、∂u/∂yは財Yの限界効用を表します。つまり、限界代替率は、財Xの限界効用を財Yの限界効用で割ったものとして解釈できます。

導出

効用関数u(x, y)を全微分すると、以下の式が得られます。


du = (∂u/∂x)dx + (∂u/∂y)dy


無差別曲線上では効用は変化しないため、du = 0となります。したがって、


0 = (∂u/∂x)dx + (∂u/∂y)dy


これを変形すると、限界代替率の式が得られます。


dy/dx = - (∂u/∂x) / (∂u/∂y)

限界代替率逓減の法則

新古典派経済学では、一般的に限界代替率は逓減すると仮定されます。これは、ある財の消費量が増えるほど、その財に対する追加的な満足度（限界効用）が減少し、他の財との交換意欲が低下することを意味します。限界代替率逓減の法則は、消費者の選択行動を分析する上で重要な役割を果たします。

生産関数の場合

効用関数の代わりに生産関数を用いて同様に限界代替率を定義することも可能です。この場合、ある生産要素を1単位増加させたときに、生産量を一定に保つために他の生産要素をどれだけ減らす必要があるかを表します。

限界代替率の応用

限界代替率は、消費者の選択行動や市場の均衡分析など、ミクロ経済学のさまざまな分野で応用されています。例えば、2つの財の価格比と限界代替率が等しくなる点で消費者の効用が最大化されるという関係は、消費者行動の基本原理の一つです。

限界代替率を理解することは、経済学の理論を深く理解し、現実の経済現象を分析するための強力なツールとなります。

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