陳鎰

陳鎰（ちん いつ）

陳鎰（1389年 - 1456年）は、明代に活躍した官僚であり、政治家です。字は有戒、号は介庵と称しました。蘇州府呉県を本貫としています。

生涯

1412年、陳鎰は進士に合格し、監察御史として官界に入りました。1421年には湖広按察副使として地方に赴任し、その後も山東按察副使、浙江按察副使を歴任しました。これらの地方官としての経験を通じて、彼は民情を深く理解し、その後の政治活動に活かすことになります。

1435年、陳鎰は右副都御史に抜擢され、都督同知の鄭銘とともに陝西に駐屯することになりました。当時、北方からの飢民が多数流入しており、その現状を目の当たりにした陳鎰は、朝廷に上疏して賦役の免除を求め、民衆の救済に尽力しました。1436年には、陝西での出兵のための物資徴収が民衆を困窮させているとして、負担の軽減を訴えました。1437年には、延綏・寧夏の辺境を巡視し、軍民の便宜を図るための改革を多く行いました。管轄下の六府で飢饉が発生した際には、官倉を開放して民衆を救済するよう働きかけ、その尽力は朝廷からも高く評価されました。1441年には、長年の外任勤務をねぎらわれ、王翺との交代制勤務を命じられましたが、1442年には陝西の人々からの強い要望により、旧任に留まることになりました。

1444年、陳鎰は右都御史に進み、関中での飢饉に対しては、租税の減免を求めました。また、オイラトのエセン・ハーンが勢力を拡大し、甘粛行省を設置しようとした際には、その動きを朝廷に報告し、警戒を呼びかけました。その後、陳鎰は靖遠伯王驥とともに、甘粛・寧夏・延綏の辺境を巡視し、民政の安定に努めました。災害が頻発する中で、軍民を安心させるための二十四事を上書し、その多くが採用されました。

陳鎰はまた、襄陽と漢中の間で流民が反乱を起こす可能性を危惧し、河南・湖広・陝西の三司に救済を求めるよう提言しましたが、当事者の同意が得られず実現には至りませんでした。しかし、後の成化年間に項忠が荊襄の反乱を鎮圧した際、陳鎰の先見性が再評価されることになります。1445年には、河南・山西の巡撫を命じられ、その地域での民政にも力を注ぎました。

1449年、土木の変で英宗がオイラトに連行されるという未曽有の事態が発生すると、陳鎰は朝廷で王振を厳しく批判しました。その結果、王振の甥である王山が処刑されました。エセン・ハーンが北京に侵攻してきた際には、陳鎰は于謙の推薦により、畿内に出て民衆を安心させる活動を行いました。オイラト軍が撤退した後、陳鎰は北京に召還され、左都御史に昇進しました。

1451年、陝西で再び飢饉が発生した際には、軍民からの強い要請を受け、陳鎰は陝西での救済活動を命じられました。1452年には、北京に召還されて太子太保の位を加えられ、王文とともに都察院を管掌することになりました。1453年、病のため官職を辞し、1456年に生涯を閉じました。死後、太保の位が追贈され、諡は僖敏とされました。彼の著書には『介庵集』6巻があります。

陳鎰の子である陳伸は、1463年に刑部照磨となりました。

まとめ

陳鎰は、明代において地方官として民政に尽力し、特に飢饉対策や異民族への警戒において顕著な功績を残しました。土木の変後の混乱期には民心の安定に貢献し、その政治手腕と民衆への深い愛情は、後世にも語り継がれるべきものです。

参考文献

• - 『明史』巻159 列伝第47

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