益田兼堯

益田兼堯：室町期石見の領主、その生涯と功績

益田兼堯は、室町時代後期に石見国（現在の島根県西部）で活躍した益田氏の当主であり、第15代七尾城（益田城）城主です。その生涯は、戦乱の時代にあって、領土の維持と拡大、そして文化の振興に尽力した姿を伝えています。

生い立ちと家督相続

益田兼堯は、益田氏第14代当主・益田兼理の子として生まれました。正確な生年は不明ですが、一般的に応永27年（1420年）生まれとされる雪舟よりも2、3歳年下と推定されています。永享3年（1431年）、父・兼理は大内盛見に従い九州で少弐氏と戦い、盛見と共に戦死しました。この時、嫡子藤次郎も戦死し、益田氏の家臣たちは兼理の遺児・松寿に起請文を提出。松寿は永享9年（1437年）に石見守護・山名熙貴を烏帽子親として元服し、兼堯と名乗るようになりました。

領主としての活動

家督を継承して以来、兼堯は長期にわたり益田氏の当主を務め、大内氏だけでなく室町幕府とも直接関係を築き、勢力を拡大しました。永享10年（1438年）には幕府から領地の安堵を受け、翌年には幕府や守護の仲介により、三隅氏・福屋氏・周布氏といった益田氏の庶家との関係を改善し、敵対していた石見吉見氏との緊張緩和にも成功しました。

しかし、その一方で、兼堯は幕府や大内氏に従い、多くの戦いにも参加しました。嘉吉元年（1441年）から寛正4年（1463年）にかけて、地元石見のほか、九州北部、美作国、播磨国、伊予国、河内国、紀伊国を転戦。嘉吉2年から3年（1442年 - 1443年）に大内氏に従って九州北部に出陣した際には、父の仇である少弐氏が相手であったためか、石見・安芸の国人たちに参戦を呼びかけました。また、寛正年間に河内で畠山義就と戦った嶽山城の戦いでは、激戦により益田氏にも大きな損害が出ましたが、その戦功により引付衆の一員に加えられました。

隠居後の生活と雪舟との交流

寛正元年（1460年）から在京していた兼堯は、寛正2年（1461年）に子の貞兼に家督を譲り、隠居しました。しかし、寛正6年（1465年）に貞兼が大内教弘に従い幕府と対立したため、兼堯は京から逃れました。応仁の乱が始まると、益田貞兼は大内政弘に従い西軍に属しましたが、文明2年（1470年）に東軍の誘いで大内教幸（道頓）が周防国で反乱を起こすと、貞兼は陶弘護と協力して反乱を鎮圧しました。その一方で、隠居していた兼堯は東軍の細川勝元と通じることで東軍からも所領安堵を得ていました。

晩年は七尾城尾崎丸の山麓にある大雄庵で過ごし、その墓も大雄庵内にあります。兼堯は雪舟と親交があり、文明11年（1479年）に益田に招いています。この時、雪舟が描いた兼堯像（益田市立雪舟の郷記念館蔵）は国の重要文化財に指定されています。また、七尾城跡に近い妙義寺の前には記念像が立てられています。

益田兼堯は、戦国時代の動乱期を生き抜き、益田氏の勢力拡大に貢献しただけでなく、文化人としても雪舟を庇護するなど、多岐にわたる功績を残しました。その生涯は、地方領主のあり方を示す好例と言えるでしょう。

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