陶鶴寿丸

陶鶴寿丸（すえ つるじゅまる）は、戦国時代の終わりに生きた悲劇的な人物です。彼の出自については、陶晴賢の末子であるという説と、その嫡男である陶長房の長男であるという説の二つが存在します。

陶鶴寿丸が生まれたのは天文20年（1551年）のことでした。父が晴賢であるならば、厳島の戦いで討ち死にした名将の血を引くことになります。年齢を考慮すると、晴賢の子である可能性が高いと考えられています。当時、陶氏は周防・長門二国を支配する大名であり、鶴寿丸はその一族の将来を担う存在として期待されていました。

しかし、鶴寿丸の人生は、陶氏の命運とともに大きく翻弄されます。彼は大内義長に近侍していましたが、弘治3年（1557年）、毛利元就による防長経略が始まると、陶氏の勢力は急速に衰退していきます。父である長房（鶴寿丸を長房の子とする説の場合）は富田若山城で毛利軍に攻められ討ち死にしました。一説には、長穂村の龍文寺に逃れた後、そこで自害したとも伝えられています。

大内義長も毛利軍に追われ、長門国の長福院（後の功山寺）で自害を余儀なくされます。その時、鶴寿丸はわずか7歳の幼児として義長のそばにいました。義長が自害する際、鶴寿丸も運命を共にし、殉死を遂げます。この鶴寿丸の死によって、陶氏の嫡流は完全に途絶えることとなりました。

鶴寿丸を殺害したのは、陶氏の忠臣であった野上房忠とされています。房忠は主君の一族を手にかけた後、自らも自害し、その忠義を示しました。主家滅亡の責任を取り、自らの命を絶ったのです。

陶氏の嫡流は鶴寿丸の死によって途絶えましたが、傍流の血筋は生き残り、陶隆満や宇野元弘らは毛利家の家臣として仕えることになります。彼らは新たな主君のもとで、陶氏の名を残しながら生き延びていきました。

陶鶴寿丸の生涯は、戦国時代の激しい動乱の中で、一族の命運を背負い、短い生涯を終えた悲劇的な少年武将の物語として、歴史に刻まれています。

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