大内義長

大内義長：波乱の生涯と大内氏の終焉

大内義長（おおうち よしなが）は、戦国時代の周防・長門両国を支配した大名であり、周防大内氏の第17代当主として知られています。しかし、その生涯は傀儡としての苦悩と、大内氏滅亡という悲劇に彩られています。

生い立ちと大内氏との関わり

天文元年（1532年）、豊後の大友氏当主・大友義鑑の次男として生まれた義長。幼名は塩乙丸（しおおとまる）と名付けられました。天文12年（1543年）、大内氏では当主・大内義隆の養嗣子であった晴持が戦死したため、後継者を失う事態となります。そこで義隆は、姉婿である大友義鑑の次男・塩乙丸を猶子としました。元服の際には、室町幕府12代将軍・足利義晴から偏諱を賜り、晴英（はるひで）と名乗るようになります。

しかし、晴英は大内氏の正式な養嗣子ではなく、あくまで猶子という立場でした。これは、義隆に実子が生まれた場合には家督を譲らないという含みを持たせたものでしたが、大友氏はこれを歓迎しました。ところが、天文14年（1545年）に義隆に実子・義尊が誕生したため、晴英は猶子関係を解消され、大友氏へ帰国することになります。この出来事は、九州の諸大名に大きな衝撃を与えたと伝えられています。

傀儡の当主として

その後、大内氏の重臣であった陶隆房（すえ たかふさ）が、当主・義隆に対して謀反を企てるようになります。隆房は、晴英を新たな大内氏の当主に擁立することを望み、大友氏に要請しました。兄である大友義鎮（後の宗麟）は、隆房が晴英を傀儡として利用し、政権が安定すれば廃位するだろうと反対しましたが、晴英自身が大内氏の当主となることを強く望みました。「要請を断り中傷を受けることの方が悔しい」とまで言い、義鎮も最終的にはこれを認めました。

天文20年（1551年）9月、陶隆房の謀反（大寧寺の変）により、大内義隆とその子・義尊は殺害されます。大内領内が混乱する中、天文21年（1552年）3月3日、晴英は山口に入り、大内家の新たな当主として擁立されました。この際、大内氏の祖先とされる百済の琳聖太子が上陸したとされる周防国の多々良浜に上陸し、山口へ向かうことで、当主としての正統性を示そうとしたと考えられています。また、隆房も晴英から偏諱を拝領し、晴賢（はるかた）と改名することで、晴英を君主として敬う姿勢を内外に示しました。

しかし、義長はあくまで傀儡であり、実権は陶晴賢が握っていました。天文23年（1554年）には、三本松城主の吉見氏討伐のため総大将として出陣しますが、全軍の指揮は事実上晴賢が執っていました。弘治2年（1556年）には、勘合貿易の再開を求めて明に使者を派遣しますが、明からは正当な大内氏当主としての承認を得られませんでした。

大内氏の滅亡

弘治元年（1555年）、陶晴賢が毛利元就との厳島の戦いで敗死すると、大内氏の勢力は急速に衰退します。義長は、大内義興の外孫とはいえ外様出身であり、一度は解消された養子という経緯もあって、家臣団からの求心力は高くありませんでした。また、晴賢の謀反やその他の内紛によって弱体化していた大内家は、完全に崩壊へと向かいました。

義長は兄・義鎮に援軍を求めますが、義鎮は元就との間に大内領分割の密約を結んでいたため、これに応じませんでした。こうして後背の安全を得た毛利氏は、防長経略を進め、弘治3年（1557年）3月には山口へ侵攻します。義長は寡兵をもってよく防戦しましたが、最終的には高嶺城を放棄し、重臣・内藤隆世の長門且山城へ敗走しました。しかし、すぐに毛利軍に包囲され、隆世は義長の助命を条件に開城し、自刃しました。義長も長門長福院（現在の功山寺）に入った後、毛利軍に囲まれて自害を強要され、4月3日に陶鶴寿丸（晴賢の末子とされる）らと共に自害しました。享年26歳。辞世の句は「誘ふとて 何か恨みん 時きては 嵐のほかに 花もこそ散れ」。

義長の死により、西国の名門・大内氏は滅亡しました。しかし、後に大内輝弘が大友氏の支援を受けて周防に上陸し、大内氏再興を試みています（大内輝弘の乱）。また、早くから分かれた傍流の山口氏が江戸時代に大名として存続しました。

義長没後の弘治3年（1557年）5月14日、毛利元就は大友義鎮に対して、大内家復興に関する所存を求めましたが、義鎮は大内家の断絶を勧めて復興を拒絶しています。永禄2年（1559年）、将軍・足利義輝が義鎮に対して、九州探題の職と共に大内氏の家督継承を認める御内書を発給しています。

大内義長の生涯は、戦国時代の権力闘争と、それに翻弄される人々の姿を象徴していると言えるでしょう。

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