陸軍三長官

陸軍三長官

陸軍三長官（りくぐんさんちょうかん）とは、大日本帝国陸軍における最高幹部の三つの役職を指します。この三つのポストは、陸軍大臣、参謀総長、そして教育総監から構成されており、これらは親補職に分類されます。

定義

帝国陸軍における「陸軍三長官」とは、陸軍大臣、参謀総長、教育総監という三つの職の総称を意味します。

概要

大正時代の初期から、陸軍の将官人事はこの三長官の合意に基づくことが慣例として定着していました。具体的な例として、清浦内閣での陸相人事を巡る争いや、宇垣一成が陸相に就任する際の「三長官合意」があります。このプロセスはその後の陸軍の幹部人事においても重要な役割を果たし、三長官が会議を開催して陸軍省、参謀本部、教育総監部の関連業務の担任規定に明文化されていました。

1936年5月に軍部大臣現役武官制が復活した際には、広田弘毅首相が議会で「大命を受けた者が軍部大臣を任意に決定する」と発言しましたが、この発言は三長官合意の存在を否定するものでした。しかしながら、三長官合意の影響力により、現役武官の陸相を推挙しないなどの行動が組織の混乱を招くこともありました。

また、三長官会議での決定は外部からの影響を完全に排除するものではなく、決定後に再考することも可能でした。例えば、第1次近衛内閣では、杉山元陸相から板垣征四郎陸相への更迭が行われる際には、近衛文麿首相が内閣や宮中からの働きかけを行い、その結果として三長官が決定を追認する形になりました。さらに、阿部内閣では、三長官会議で多田駿が後任の陸相と決定されたものの、昭和天皇の希望によってその合意が覆る事例もありました。

三長官個々の異動についても、三長官合意が必要であり、例えば1935年の真崎甚三郎教育総監の更迭時には、陸軍大臣が更迭を望んでも教育総監が拒否するという状況が生じ、激しい議論が繰り広げられました。この際、参謀総長が陸軍大臣の立場を支持し、更迭が実現する結果となりました。

戦後になると、三長官合意の重要性は次第に薄れていきました。例えば、東久邇宮内閣が発足した際には、三長官会議で土肥原賢二が陸相に推挙されたものの、東久邇宮首相は下村定を陸相として選びました。

また、陸軍三長官の3つの役職をすべて経験した人物としては上原勇作と杉山元の2名が挙げられます。これらの職は、帝国陸軍の運営において非常に重要な役割を果たしていました。

参考文献

• - 秦郁彦 編著『日本陸海軍総合事典』（第2）東京大学出版会、2005年。

関連項目

• - 軍部大臣現役武官制

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