雙龍・イスタナ

雙龍イスタナ：メルセデス・ベンツの技術が息づくキャブオーバー型ワンボックス

イスタナ（ISTANA）は、韓国の自動車メーカー、雙龍自動車（現: KGモビリティ）が製造・販売したキャブオーバー型のワンボックス車です。メルセデス・ベンツとの技術提携により、1995年から2004年まで生産されました。その特徴的な設計と広い室内空間から、多様な用途で活躍しました。

初代イスタナ（1995年 - 2004年）

概要

イスタナは、雙龍自動車がメルセデス・ベンツとの提携を通じて開発した車両です。メルセデス・ベンツの小型商用車「MB100」をベースとし、ディーゼルエンジンの技術供与を受ける代わりに、OEM生産を行うという条件で誕生しました。他の雙龍車がプラットフォームやエンジンを共有するのに対し、イスタナはOEM生産であるため、メルセデス・ベンツの要素が色濃く反映されています。

キャブオーバー型ワンボックスバンとしては珍しいFF（前輪駆動）方式を採用しているのが最大の特徴です。これにより、助手席は1席のみとなり、エンジンオイルや冷却水の給油は、ボンネットを開けて行う方式となっています。縦置きのエンジンは、90度に曲げられたシャフトを介して駆動軸と連結する複雑な構造を持ち、トランスミッションはボーグワーナー製の5速MTのみが搭載されました。

FF駆動であるためプロペラシャフトが不要となり、全幅と全高を広く取ることができ、広大な室内空間が実現しました。これにより、12名乗りワゴン、15名乗りワゴン、2名乗りバン、6名乗りバンの4つのモデルが用意されました。エンジンは、ムッソーと共通の2,900cc直列5気筒OM662型（95ps）が搭載されました。

発売当時の価格は、12名乗りベーシックモデルが1,071万ウォン、15名乗りが1,249万ウォンでした。ボディはショートボディとロングボディ（オムニ）の2種類が用意されました。メルセデス・ベンツとの提携による高品質さが評価され、競合車と比較して長所が多く、塾や教会の通学バスとして人気を博しました。輸出仕様は「MB100/140」として販売されました。

変速操作には注意が必要で、誤ると「馬乗り現象」が発生し、シフトが硬くなったり速度が低下したり、振動が激しくなることがありました。

年表

1995年4月28日 - 発表。
1995年7月 - 販売開始。
1997年 - テレビCMにメルセデス・ベンツの副社長が出演。
1997年3月 - ツートンカラーを新設定。
1998年 - 雙龍自動車が大宇自動車に吸収され、「大宇・イスタナ」としてエンブレムを変更し販売。
2000年 - 雙龍ブランドの復活に伴い、車名も「サンヨン・イスタナ」に戻る。
2001年1月 - バンパーガードと乗用車風サイドミラーが新設され、アルミホイールのデザインを変更。
2003年5月30日 - ショートボディの製造を終了。
2004年 - 中国の自動車メーカー、上海匯忠が「マクサス」として現地生産を開始。
2004年1月 - 収益性と安定性の観点、自動車排出ガス規制への対応が困難となり、ロングボディも製造終了。実質的な後継車種はロディウス。
2010年 - 中国での現地生産が終了。

車名の由来

車名の「イスタナ」は、マレーシア語で「宮殿」を意味します。

まとめ

イスタナは、メルセデス・ベンツとの提携により生まれた、ユニークなキャブオーバー型ワンボックス車です。FF駆動による広大な室内空間と、メルセデス・ベンツの技術が活かされた高品質さが魅力でした。様々な用途で活躍し、特に通学バスとしての人気が高かったモデルです。

関連項目

雙龍・ロディウス

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