霊巌寺 (泰山)

霊巌寺：悠久の歴史を誇る中国の名刹

霊巌寺は、中華人民共和国山東省済南市長清区に位置する仏教寺院です。泰山の北西方、霊巌山と方山の麓に抱かれた場所にあり、その清らかな泉と静寂に包まれた景観は、古くから多くの人々を魅了してきました。玉泉寺、棲霞寺、国清寺と共に「天下の四絶」と称され、中国仏教における重要な寺院の一つとして知られています。

立地と環境

霊巌寺は、東岳泰山の北西に位置し、長清県の南東に当たる霊巌山と方山（玉符山）の麓にあります。豊かな自然に囲まれ、清らかな泉が流れるその風景は、訪れる人々に安らぎを与えます。

歴史

朗公谷山寺

霊巌寺の周辺地域への仏教の伝来は、五胡十六国時代にまで遡ることができます。後趙の時代の僧侶、竺僧朗が寺を建立したという記録が残っています。竺僧朗は仏図澄の弟子であり、冉閔の乱を避けて351年に泰山の金輿谷（朗公谷）に精舎を建立したと伝えられています。

竺僧朗は、前秦の苻堅をはじめとする各地の支配者たちの帰依を受け、広大な伽藍を再建しました。苻堅らが竺僧朗に深く帰依した様子は、『広弘明集』などの文献に残された書簡からうかがい知ることができます。

創建以後

北魏時代の正光年間（520年-525年）には、法定という僧侶が朗公谷寺の跡地に霊巌寺を建立したとされています。しかし、北周の廃仏政策により一時中断されましたが、隋代に入り、583年に復興されました。文帝が595年に泰山を巡幸した際、曇遷の進言により寺の敷地が拡張されました。『続高僧伝』巻18の曇遷伝には、寺の名前が宝山道場と記されていますが（煬帝が寺を道場と改名させたため）、当時から霊巌寺という名前で広く知られていたようです。

霊巌寺は、その長い歴史の中で、多くの僧侶や信者たちに支えられ、中国仏教の発展に大きく貢献してきました。現在もその美しい姿を残し、多くの人々が訪れる信仰の場として、重要な役割を果たし続けています。


参考文献
藤善真澄「日中交流史上の泰山霊巌寺」（『関西大学東西学術研究所紀要』37、2004年）

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