後趙

後趙（319年 - 351年）

後趙は、五胡十六国時代に羯族の石勒によって華北に建てられた国です。同じく「趙」を国号とした劉淵による前趙と区別するため、後趙と呼ばれます。また、石氏の王朝であることから石趙とも呼ばれます。

建国までの経緯

石勒は、もともと羯族の出身でした。羯族は西晋時代に并州（現在の山西省）一帯に移住しましたが、漢族社会に依存していました。八王の乱による混乱と大飢饉により、石勒は奴隷に身を落とすなど苦難を経験しました。

しかし、石勒は頭角を現し、群盗の首領として勢力を拡大。劉淵が漢（後の前趙）を興すと帰順し、その配下として軍事力を蓄えました。311年には洛陽を攻略して西晋を滅ぼすという功績を挙げ、華北で独自の勢力圏を築き上げます。

319年、劉曜が前趙を再興すると、石勒は襄国（現在の河北省邢台市）で自立し、趙王を称して後趙を建国しました。華北は前趙と後趙の対立の時代を迎えます。

華北の覇権争い

後趙は国力増強に努め、周辺地域への侵攻を繰り返しました。東晋との衝突や、前趙との激しい戦いを経て、328年には劉曜を捕らえて処刑し、前趙を滅ぼしました。330年、石勒は皇帝に即位し、華北の覇者として君臨します。

石勒は高句麗や鮮卑などの周辺諸国を服属させ、その勢威を誇示しました。内政面では、漢人の知識人を積極的に登用し、官僚機構を整備。農業生産力の回復にも努め、国力を高めました。

石虎の時代と衰退

333年に石勒が死去すると、皇位は子の石弘が継承しますが、実権は石勒の下で活躍した石虎が掌握します。石虎は反対勢力を粛清し、334年には石弘を廃して自ら皇帝に即位しました。

石虎は鮮卑や前涼、東晋への侵攻を繰り返しましたが、目立った成果は得られませんでした。また、宮殿や都城の建設、女色に溺れるなど奢侈な生活を送り、国力を消耗させました。

石虎の晩年には皇族間の権力闘争が激化し、後趙は内紛状態に陥ります。349年に石虎が死去すると、後継者争いが表面化し、国は混乱を極めました。

冉閔の乱と滅亡

石虎の死後、後趙では短期間に4人の皇帝が交代するという異常事態が起こります。その混乱の中、石虎の養孫であった漢人の冉閔がクーデターを起こし、石氏一族を虐殺。国号を魏と改め、冉魏を建国しました。

冉閔による虐殺は、後趙国内の民族対立を激化させ、各地で反乱が勃発しました。石虎の子である石祗は襄国で皇帝を称し、冉魏に対抗しますが、最終的には冉閔に通じた部下に殺害され、後趙は滅亡しました。

冉閔は後趙を滅ぼしたものの、その隙を突いた前燕によって滅ぼされることになります。

後趙の特徴

後趙は、石勒というカリスマ的な指導者のもと、多様な民族が結集した国家でした。しかし、石勒の死後、後継者たちはそのカリスマを受け継ぐことができず、内紛と民族対立によって急速に崩壊しました。

石勒は、出自を問わず有能な人材を登用し、異姓の者を養子として宗室に取り立てるなど、独特の方針を取りました。しかし、これが後継者争いを激化させ、国の滅亡を早める一因となりました。

石勒は官僚機構を整備し、法制度を確立するなど、国家体制の確立に努めましたが、石虎の時代には奢侈な生活によって経済が疲弊し、政治腐敗が進みました。これらの要因が複合的に作用し、後趙は短期間で滅亡することになったのです。

羯族について

石勒の出身である羯族は、匈奴の一種であり、西晋時代に華北に移住しました。内田吟風は、羯とは中国人がつけた蔑称であるとしています。一方、E. G. Pulleyblankは、羯とはエニセイ語で石を意味する言葉であるとしています。

歴代皇帝

石勒（在位：319年 - 329年）
石弘（在位：333年 - 334年）
石虎（在位：334年 - 349年）
石世（在位：349年）
石遵（在位：349年）
石鑑（在位：349年 - 350年）
* 石祗（在位：350年 - 351年）

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