霞のお新

霞のお新（かすみのおしん）

霞のお新は、TBS系列で放送された時代劇『水戸黄門』に登場する架空のくの一であり、風車の弥七の妻という設定です。宮園純子が演じ、第3部から第8部、第12部から第14部、第17部から第26部、そして1000回記念スペシャルに出演し、長きにわたり水戸黄門一行に同行した最初の女性キャラクターとして親しまれました。

設定・人物像

お新は、初代風車の弥七（中谷一郎）の妻であり、弥七の元親分である忍び崩れの義賊・野ぶすまの仁平（市川小太夫）の一人娘です。東野黄門の時代には、水戸光圀一行の紅一点として諸国漫遊の旅に同行し、光圀の隠密としても活躍しました。

母性的な性格で姉御肌、そしてハキハキとした物言いが特徴です。かつては、ある事情から弥七の命を狙っていましたが、後に和解し結ばれて夫婦となり、江戸で父が営んでいた蕎麦屋「田毎庵」を受け継ぎました。三味線を弾き、踊りや唄を得意とするなど、多才な一面も持っています。身のこなしが軽く、戦闘では弥七と同様に小太刀を用いますが、援護に回ることが多いです。隠密行動時には弥七と同じく黒装束に身を包み、霞玉を投げて敵から脱出するなどの忍術も使います。また、作中ではお色気担当としての役割も担っていました。

佐々木助三郎と佐々木志乃が結ばれてからは、お新は江戸に残り、田毎庵を守ることが多くなります。光圀一行が江戸を起点として旅に出発・帰着する際には、必ず田毎庵に立ち寄り、お新は彼らの旅支度を整えたり、帰着祝いの蕎麦を振る舞いました。江戸を舞台とした物語では、光圀一行の旅立ちに際しての騒動や、最終回での騒動に隠密として復帰することもありました。

結婚前は、弥七と「弥っちゃん」「お新ちゃん」と呼び合っていましたが、結婚後は「おまえさん」「お新」と呼ぶようになります。弥七を尊敬する柘植の飛猿からは「女将さん」と呼ばれ、一方、弥七の子分を名乗る八兵衛からは、第3部では「お新ちゃん」と呼ばれましたが、弥七と結婚した第4部以降は「お新さん」と呼ばれるようになり、敬語を使うようになりました。

シリーズごとの活躍

水戸黄門（第1-13部）時代

東野黄門時代の第3部から第8部、そして第13部では、メインヒロインとして光圀一行の諸国漫遊の旅に同行し、夫である弥七とともに光圀の隠密として活躍しました。大立ち回りにも参加し、物語を盛り上げました。

第3部では、光圀の命を狙う刺客の一人として登場します。薩摩藩をめぐる柳沢吉保の陰謀に巻き込まれ、父・仁平の手下であった夜鴉の藤吉に父を殺害されます。お新は藤吉の策略により、幼馴染で恋仲であった弥七を父の仇と思い込まされてしまいます。

藤吉を相棒として弥七の命を狙い、藤吉とつるんでいる柳沢の密偵・柘植の九郎太の光圀暗殺を手伝いますが、罪のない人々に危害を加えることに良心の呵責を感じます。第1話では善良な薩摩藩士の殺害にも加担してしまいますが、中盤で真実を知り弥七と復縁、光圀一行と和解し、最終回で父の仇である藤吉を討ち果たし、父の墓前に弥七と夫婦になることを報告しました。

夫婦になる前は、弥七と「お新ちゃん」「弥っちゃん」と呼び合っていましたが、第4部第1話で夫婦になってからは「お新」「お前さん」と呼び合うようになります。騙されていたとはいえ、命を狙った過去を許してくれたばかりか、弥七との結婚も後押ししてくれた光圀に恩義を感じ、光圀一行の仲間となって影の御用も務めます。弥七の子分を名乗る八兵衛からは姉貴分として扱われ、「八っつぁん」と呼ばれています。

かなりのやきもち焼きであり、弥七の浮気を疑っての夫婦喧嘩は日常茶飯事です。その激しさは、うっかり八兵衛の口から語られるほどです。また、弥七が芸者遊びに加わったと知った時の怒りは、弥七も逃げ出すほどでした。

第9部から第11部では、メインヒロインを佐々木志乃にバトンタッチし、登場回数は減りますがセミレギュラーとして存在は語られています。第9部第1話で弥七の口からお新の妊娠が語られ、最終話（第26話）で娘・お梅が誕生したことが弥七の口から語られました。お梅の名付け親は光圀であり、光圀の別名（俳号）「梅里」から「梅」の字を取り名付けられました。

第12部では第1話と最終話（第26話）に登場し、弥七とともに水戸老公の影の御用を務めます。この両回には幼少のお梅が登場しました。なお、お梅は第13部では本人は登場していませんが、存在は夫婦の口から語られました（旅立ちに際し、知り合いに預けられたという設定です）。

水戸黄門（第14-21部）時代

第14部と第17部の第1話、第18部第1話と第2話、最終話（第33話）、第19部と第20部の第1話と最終話、第21部の最終話（第32話）に登場しました。一行に同行することはなくなり、江戸で弥七の留守を守り、田毎庵を預かることになります。江戸でのシーンがない場合には登場しませんでしたが、江戸でのシーンがあっても必ず登場するわけではありませんでした。

第17部第1話では、長期にわたり水戸黄門一行に同行した歴代3人の女性キャラクターである霞のお新、佐々木助三郎の妻である志乃、そしてかげろうお銀の顔合わせが、志乃がお銀をお新に紹介するという場面で実現しました。志乃は忍者ではなく武家の女性であったため、お新の役目はシリーズを隔ててお銀に受け継がれることになりました。なお、この3人の顔合わせは、後にも先にもこの1回限りです。本作の最終回ではお新も志乃も登場せず、次の第18部で助三郎が配役交代に伴い独身に戻され、志乃の存在はなかったことにされたためです。

第20部最終話では、お新が風車を使用する場面がありました。この際には、お新・お銀・飛猿という珍しい組み合わせで立ち回りが行われました。

水戸黄門（第22-28部）時代

第22部の第1話と第2話、第23部最終話（第40話）、第24部の第1話と2時間スペシャル（第27話）と最終話（第37話）、第25部と第26部の最終話に出演しています。

第22部最終話と第23部第1話には弥七が登場せず、その際にはお新も登場していません。ただし、第25部最終話には弥七が登場しないまま、お新のみが出演するという珍しいケースとなりました（弥七は日光東照宮への代参で不在という設定でした）。

弥七・お新の夫婦が揃って登場したのは第26部の最終話が最後となりました。なお、これ以後田毎庵の場面は1000回記念スペシャルまで登場しませんでした。

水戸黄門（第29-30部）時代

作品設定が一新されたため、お新は登場していません。弥七や八兵衛と同様に、お新やお梅の存在もなかったことにされたと考えられます。

水戸黄門（第31-43部）時代

1000回記念スペシャルで登場しました。この時、弥七はVTRのみで登場しています。成長した娘のお梅が登場し、水戸老公一行に同行し、終盤では父と同様に風車を使用して攻撃しました。なお、中谷一郎版弥七、霞のお新、お梅の登場はこれが最後となりました。

その後登場した、内藤剛志による2代目風車の弥七は独り身で蕎麦屋とも無縁であるという設定に変更されたため、お新やお梅の存在は再度なかったことにされたと思われます。

最終回スペシャルでは、お新を演じていた宮園純子が八兵衛とともに営む蕎麦屋の女将・おふじという、別人ながらもお新を彷彿とさせる役で出演しました。助さんや格さんとも以前から面識があるかのような振る舞いで、以前光圀一行の旅に何度か同行した事があるかのような様子でした。なお、おふじの名は出演者クレジットに示されただけで、劇中では語られず、蕎麦屋の屋号も不明です。

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