霧積温泉

霧積温泉（きりづみおんせん）

霧積温泉は、群馬県安中市松井田町坂本に位置する名湯です。この地域はかつて荒治療の草津、仕上げの霧積と呼ばれ、温泉には多くの歴史と伝説が息づいています。霧積という名称は、周囲の霧が多い環境に由来しており、昔は「犬の湯」や「入りの湯」と呼ばれていました。

泉質と特徴

霧積温泉の泉質は、カルシウム-硫酸塩泉、ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉です。源泉のpHは7.6で、蒸発残留物は3.311%と、肌に優しい温泉です。源泉の温度は38.9°Cで無色透明で、自然に湧き出ていることが特徴です。ただし、温泉街は存在せず、温泉旅館は一軒「金湯館」のみが営業しています。

歴史に隠された伝説

霧積温泉の歴史は、源頼光の四天王の一人、碓井貞光にまでさかのぼります。1200年代にはすでにこの温泉が発見されており、ある伝説では、傷を負った猟犬が偶然温泉を見つけたと伝えられています。このことから温泉は「犬の湯」と名付けられ、後には「入りの湯」と呼ばれるようになりました。

江戸時代には碓氷関所があったため、湯治客は限られた村民が中心でした。1654年の文書には、安中藩以外の者はほとんど訪れなかったことが記録されています。温泉の管理権は、坂本宿という場所に委託され、1880年に碓氷温泉金湯社に引き継がれました。

近代になると、明治時代の初めには避暑地として知られるようになり、多くの文学者や政治家がこの地を訪れました。特に、伊藤博文が明治憲法草案を起草した部屋は現在も残っており、彼の足跡を感じることができます。

1888年にはカナダ人宣教師アレクサンダー・クロフト・ショーが訪れ、外国人観光客を呼び込むために温泉を紹介する活動を行いましたが、その後、自然災害によって避暑地としての姿は徐々に衰退していきました。1896年や1910年には山津波が発生し、多くの温泉旅館や別荘が流されてしまい、金湯館のみが存続しました。

現在の状況とアクセス

1959年以降、霧積温泉はボーリングによって源泉が開発され、現在も温泉を楽しむことができます。アクセス方法としては、鉄道では信越本線の横川駅からタクシーで約30分、自家用車の場合は上信越自動車道松井田妙義ICから約35分ほどかかります。また、訪問者には宿の送迎サービスも提供されていますが、日帰り入浴の場合は送迎はできません。

文化的なつながり

霧積温泉は詩や小説の舞台にも登場しています。西條八十の詩「帽子」や、森村誠一の小説『人間の証明』で舞台として知られ、多くの文化人がその魅力に引き寄せられました。

温泉を愛した文化人たちの詩碑も点在しており、特に川田順や勝海舟の記念碑は訪問者に深い思索を促します。こうした背景を持つ霧積温泉は、静寂と自然の美に包まれた特別な場所です。

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