非関税障壁

非関税障壁とは

非関税障壁とは、関税以外の方法で国際貿易を制限する措置の総称です。これは、輸入量に対する制限、輸入手続きの複雑化、国内産業への補助金支給など、多岐にわたります。広義には、輸出入に不平等な結果をもたらす、特定の国の社会制度や経済構造も含まれる場合があります。

非関税障壁の具体例

数量制限: 特定の製品の輸入量を制限する措置。
輸入時の課徴金: 関税以外に、追加の輸入税を課す。
輸入手続きの煩雑化: 輸入許可や検査を厳格化し、手続きを複雑にする。
国内産業への補助金: 自国産業を保護するために、政府が補助金を支給する。
国内生産品の利用義務: 国内で販売される製品に、一定割合以上の国内生産部品の使用を義務付ける。
政府調達の制限: 政府が調達する製品を、事実上国内企業に限定する。
輸入コンテンツの制限: テレビ放送や映画上映において、輸入コンテンツの割合を制限する。

非関税障壁を巡る議論

世界恐慌の際、各国が保護主義に傾き、ブロック経済を形成したことが、第二次世界大戦の一因となったという歴史があります。経済学の観点からは、自由[[貿易]]が経済成長を最大化すると考えられており、保護主義的な政策は経済を悪化させるという見方が一般的です。しかし、各国にはそれぞれ国内産業を保護したいという思惑があり、特に比較優位にない産業関係者は、輸入抑制を政治家に求める傾向があります。

近年では、環境保護や労働者保護の観点から、非関税障壁が設けられることもあります。例えば、

公衆衛生: 一定の規格を満たさない食品や農産物の輸入を禁止する。
労働ダンピング: 労働者を酷使して価格競争力を得た製品を排除する。
宗教的理由: 宗教的な規範に反する製品を排除する。
障害者保護: 障害者保護を行わない国で製造された製品を排除する。
環境汚染対策: 環境汚染対策を十分に行わない国で製造された製品を排除する。
遺伝子工学: 遺伝子工学的手法を用いた農畜産物を排除する。
資源管理: 資源管理国際協定に従わない国で収穫された水産物を排除する。

これらの措置に対して、自由[[貿易]]を支持する立場からは「自国の正当化のために非経済的な問題を悪用している」という批判がしばしば行われます。多くの場合、当事国間で紛争が発生し、貿易摩擦に発展するケースも少なくありません。

非関税障壁の撤廃は、消費者にとって商品の価格低下やコストパフォーマンス向上といったメリットをもたらします。しかし、食品の製造年月日の表示義務を消費期限表示のみに変更した事例のように、消費者にとってデメリットとなる可能性も存在します。

日本における非関税障壁の事例

過去には、日本においても以下のような非関税障壁が存在し、撤廃されたものがあります。

大規模小売店舗法: 大規模小売店の出店を規制していた法律。トイザらスの日本進出をめぐる議論の中で、撤廃されました。
酒税法: 日本酒や焼酎と比べて、洋酒であるウイスキーやブランデー、ワインに対する税率が高かった問題がありましたが、法改正で解消されました。
自動車関連の規制: リアフォグランプ、ドアミラー、扁平タイヤ、速度警告音、大型二輪免許、大型トラックの速度表示灯、二輪車の高速道路二人乗り禁止など、多くの規制が撤廃されました。
軽自動車: アメリカ合衆国が、軽自動車の規格を非関税障壁であると主張しましたが、ダイハツの会長はこれを否定しています。
普通乗用車（3ナンバー）への高額な自動車税: 1989年に改正されたが、更なる引き下げが求められています。
TRONプロジェクト: BTRONをめぐる通商問題がありました。

ドイツにおける非関税障壁の事例

* ビール純粋令: ビールの製造方法を規制していた法律。輸入品・輸出品については規制が撤廃されました。


非関税障壁は、国際貿易において複雑な問題を引き起こす要因となります。経済的な側面だけでなく、社会的な要因や倫理的な側面も考慮する必要があるため、今後も様々な議論がなされるでしょう。

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