韓国GM

韓国GMの歴史と変遷

韓国GM（GM Korea）は、ゼネラルモーターズ（GM）の子会社として、韓国における自動車製造・販売を担う企業です。主にシボレーブランドを展開しており、その歴史は複雑で、複数の企業統合やブランド変更を経て現在に至ります。

起源：国産自動車からセナラ自動車へ

1937年、仁川で「国産自動車」が設立されたのが、韓国GMのルーツの一つです。当初は貨物自動車の生産が中心でした。その後、1954年には「新進工業」が設立され、自動車部品製造から始まり、米軍ジープの修理・改造へと事業を拡大しました。

1962年には、在日韓国人実業家の朴魯貞によって「セナラ自動車」が設立されました。これは、韓国政府の支援の下、日産自動車と提携し、ブルーバードのノックダウン生産を開始したものでした。しかし、同時期に新進工業もマイクロバス製造で成功を収める一方、国産自動車は倒産しています。

新進自動車とトヨタ提携

1963年、セナラ自動車は経営破綻しますが、新進工業がその事業を引き継ぎます。1964年、「新進自動車」に改称し、トヨタ自動車との技術提携を結びました。これにより、クラウン、コロナ、パブリカなどのノックダウン生産を開始します。しかし、当時の日韓関係から、契約は「仮調印」に留まりました。

1966年、トヨタとの正式提携が開始され、本格的にトヨタ車の生産が始まりました。ところが1972年にはトヨタが撤退、GMが資本参加し「GMコリア」が誕生、シボレーブランド車の生産が開始されました。

セハン自動車から大宇自動車へ

1976年、韓国産業銀行がGMコリアの株式を取得し、「セハン自動車」に社名変更。いすゞ自動車との提携により、ジェミニやエルフを生産します。その後、1978年に大宇財閥がセハン自動車を買収し、1983年には「大宇自動車」へと社名が変更されました。この頃から、オペル車をベースとしたルマンやローヤルなどを生産しました。

1990年代にはホンダとの技術提携でレジェンドを生産したり、スズキのアルトを「ティコ」として生産したりしました。

大宇自動車の経営破綻とGMの再編

大宇自動車は、1997年に雙龍自動車を買収するなど事業を拡大しますが、2000年に経営破綻。2002年、GMが旧大宇自動車の大部分を買収し、「GM大宇自動車技術」が発足しました。これにより、海外市場では「シボレー」ブランドが導入され、大宇の名前は消滅していきました。

韓国GMへの改称とシボレーブランドの展開

2011年1月、GMは韓国市場での大宇ブランドを廃止し、シボレーブランドに統一することを発表。これに伴い、「GM大宇自動車技術」は「韓国GM」へと社名変更されました。これにより、コルベットやカマロといったスポーツカーも導入されました。しかし、2013年には欧州でのシボレー販売を終了し、オペルとボクスホールに資源を集中することとなりました。

近年の動向と課題

2018年、韓国GMは群山工場の閉鎖を決定し、労使関係の悪化や経営再建の問題が表面化しました。韓国政府からの支援を受けつつ、経営再建を進めていますが、労働組合との対立やストライキが度々発生しています。2022年には富平第2工場も閉鎖されました。

現在、韓国GMは富平と昌原の工場で自動車を生産しています。また、ベトナムにも組立工場を所有しています。シボレー・トレイルブレイザーやトラックスなどのSUVを中心に生産しており、一部車種は輸出も行っています。

日本メーカーとの提携

韓国GMの歴史を振り返ると、日産、トヨタ、いすゞ、スズキ、ホンダなど、多くの日本メーカーとの技術提携が行われてきたことが分かります。これは、韓国の自動車産業発展において、日本メーカーが重要な役割を果たしてきたことを示しています。

セナラ自動車疑惑事件

セナラ自動車の設立には、朴魯貞という在日韓国人実業家が関わっていましたが、当時のKCIA部長の金鍾泌が、会社を資金源として利用し、配分増加や企業献金を強引に要求したことから、朴はパスポートを取り上げられ、拷問を受けました。朴は日本へ逃亡し、その後セナラ自動車は経営破綻に至りました。この事件は、企業と政府の癒着疑惑として、韓国で大きな社会問題となりました。

まとめ

韓国GMは、その長い歴史の中で、様々な変遷を経てきました。初期の国産自動車から、セナラ自動車、新進自動車、GMコリア、セハン自動車、大宇自動車、そして現在の韓国GMに至るまで、数々の企業統合やブランド変更を経験しています。現在では、シボレーブランドを中心に、韓国国内および海外市場に向けて自動車を製造・販売しています。その歴史は、韓国自動車産業の発展とともにあり、今後もその動向が注目されます。


主な生産拠点
富平（仁川）工場：自動車の組立、ガソリン/LPGエンジンの製造
昌原工場：自動車の組立、ガソリン/LPGエンジンの製造
保寧工場：トランスミッション、エンジン部品の製造

過去の主な生産車種
セナラ：日産ブルーバードのノックダウン生産
新進：トヨタクラウン、コロナ、パブリカのノックダウン生産
GMコリア：シボレー1700、レコード
セハン：ジェミニ、エルフ
大宇：ルマン、ティコ、アカディア
* 韓国GM：クルーズ、オーランド、スパーク

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