順動丸

順動丸（じゅんどうまる）

順動丸は、幕末に江戸幕府が保有した蒸気船であり、元はイギリスの商船「ジンギー」（仁記）でした。

概要

「ジンギー」は1861年にイギリスで建造された鉄製の外輪式蒸気船でした。全長約77m、幅約8.6m、深さ約5.1m、排水量405トンで、360馬力の蒸気機関と2本の煙突を備えていました。武装は大砲1-2門とわずかで、主に輸送任務を想定していました。乗員数は不明ですが、幕府海軍での運用時には水夫・火焚夫が65人おり、これに士官が加わっていました。

1862年（文久2年）、江戸幕府は西洋式海軍の整備を進める一環として、本船を15万ドルで購入し、横浜で引き渡されました。同時に、旧船名に似た音の「順動丸」と改名されました。当初は軍艦に分類されましたが、武装の貧弱さから運送船へと類別が変更されました。

順動丸は、新鋭船として物資輸送のほか、幕府高官の輸送にも使用されました。1863年1月には、勝海舟の指揮のもと、松平春嶽や杉浦正一郎らを乗せて品川から大坂へ向かいました。同年6月には、将軍徳川家茂による大阪湾の防御状況視察にも使用され、その後、勝海舟の案内で姉小路公知一行も乗船しました。姉小路は乗船体験を通じて攘夷論を変えたとも言われていますが、それが暗殺事件（朔平門外の変）につながったとする見方もあります。

しかし、順動丸は運用中に何度か事故に見舞われています。1862年2月には、勝海舟が大坂での砲台築造の任務で本船に乗り大坂へ向かいましたが、同年12月には商船と衝突して外輪を損傷、翌年には機関故障を起こしています。

第二次幕長戦争時には小倉にあり、「富士山」、「翔鶴」が到着すると修理のため長崎へ向かいました。戊辰戦争では旧幕府方の1隻として行動し、多量の軍需物資や兵員を輸送しました。新潟方面の奥羽越列藩同盟への支援として派遣され、箱館から新潟港へ軍需物資を運搬しましたが、1868年7月13日（慶応4年5月24日）に寺泊に停泊中、新政府軍艦隊の攻撃を受けて損傷・自爆しました（寺泊沖海戦）。

残骸のうち外輪のシャフトが引き上げられ、現在は長岡市で展示されています。

脚注

参考文献

朴栄濬 「海軍の誕生と近代日本--幕末期海軍建設の再検討と「海軍革命」の仮説」『SGRAレポート』19号 関口グローバル研究会、2003年。
松浦玲 『勝海舟』 中央公論社〈中公新書〉、1968年。
金澤裕之『幕府海軍の興亡　幕末期における日本の海軍建設』慶應義塾大学出版会、2017年、ISBN 978-4-7664-2421-8

外部リンク

「坂本龍馬も乗った『順動丸』シャフト特設展示」 - nagaokacity YouTubeチャンネル

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