須藤時一郎

須藤時一郎：激動の時代を駆け抜けた多才な人物

須藤時一郎（すどう ときいちろう）は、1841年（天保12年）に陸奥国伊達郡川俣（現福島県伊達郡川俣町）で生まれ、1903年（明治36年）に没した、幕末から明治にかけて活躍した人物です。当初は高梨姓でしたが、後に須藤家の養子となり須藤姓を名乗るようになりました。彼は、幕臣、大蔵官僚、銀行家、政治家と、時代とともにその身分や役割を変えながら、日本の近代化に大きく貢献しました。

幕末の動乱期

須藤時一郎は、幕臣・高梨仙太夫の長男として生まれました。幼少期より、父と共に江戸へ移り、漢学や剣術を修めました。その後、評定所留役から外国方に転じ、1863年（文久3年）には横浜鎖港談判使節団の一員として渡仏を経験しました。帰国後は歩兵指図役頭取に就任しますが、戊辰戦争では弟の沼間守一らと共に東北地方を転戦。奥羽越列藩同盟の崩壊とともに捕らえられ、江戸で監禁されるという苦難も経験しました。その後、静岡藩に出仕し、沼津兵学校の庶務を担当しました。

明治維新後の活躍

明治維新後、須藤は1870年（明治3年）に上京し、尺振八が創設した共立学舎で英語教師として教鞭を執りました。1872年（明治5年）には大蔵省に入省し、翻訳掛、紙幣寮（現国立印刷局）などを歴任しました。大蔵官僚として活躍する一方で、銀行界にも進出し、第一国立銀行や第三十九国立銀行、第四十国立銀行などで要職を務めました。また、東京貯蓄銀行の監査役や東京板紙の取締役なども兼任し、その多才ぶりを発揮しました。

政治家としての活動

須藤は、弟である沼間守一が設立した嚶鳴社に加わり、自由民権運動を推進しました。その後、政界にも進出し、浅草区会議員、同議長、東京市会議員、同参事会員、東京府会議員、同議長などを歴任しました。1894年（明治27年）には、第4回[[衆議院議員総選挙]]で当選し、衆議院議員としても活動しました。所属は帝国財政革新会、後に同志会へと移っています。

多岐にわたる人脈

須藤の親族には、弟の沼間守一（ジャーナリスト、東京府会議長）や高梨哲四郎（弁護士、衆議院議員）がいます。これらの人脈からも、彼が当時の社会において重要な役割を担っていたことが伺えます。

まとめ

須藤時一郎は、幕末から明治という激動の時代を、様々な分野で活躍した人物です。幕臣としての経験、大蔵官僚としての手腕、銀行家としての実績、そして政治家としての活動は、いずれも日本の近代化に大きく貢献しました。彼の生涯は、激動の時代を生き抜いた一人の男の軌跡を鮮やかに物語っています。

参考資料

坪谷善四郎編『実業家百傑伝 第四編』東京堂書房、1892年。
人事興信所編『人事興信録 初版』人事興信所、1903年。
『衆議院議員総選挙一覧 上巻』衆議院事務局、1915年。
衆議院事務局編『衆議院議員総選挙一覧 自第7回至第13回』衆議院事務局、1918年。
『総選挙衆議院議員略歴 第1回乃至第20回』衆議院事務局、1940年。
『群馬県人名大事典』上毛新聞社、1982年。
衆議院・参議院『議会制度百年史 - 衆議院議員名鑑』大蔵省印刷局、1990年。
静岡新聞社出版局編 『静岡県歴史人物事典』 静岡新聞社、1991年。
* 竹内誠編『徳川幕臣人名辞典』東京堂出版、2010年。

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