預所

預所（あずかりどころ/あずけしょ/あずがっそ/あずかりしょ）とは

預所とは、中世の荘園において、本所から任命を受けて、その荘園の管理・運営を統括した役職です。鎌倉時代の法制書『沙汰未練書』には、「預所は本所の御領における所務代官である」と明記されており、その役割が示されています。12世紀頃から、それまでの専当、預、検校、定使といった役職に代わって登場しました。

預所の成立背景

荘園の本所は、多くの場合、王家、摂関家などの権門貴族や大寺社でした。これらの権力者は、地方の所領を直接管理することを嫌い、代わりに信頼できる人物を預所に任命して、荘園の経営を任せました。これにより、荘園の管理体制が整備され、効率的な運営が行われるようになりました。

預所の多様な形態

記録や文献に現れる預所は、その地位や職掌が多岐にわたることが知られています。一般的な預所は、本所から任命を受け、在地において下司や公文などの下級荘官を指揮して、荘園の経営にあたっていました。在地における預所は、本所から派遣された者、現地の有力者、開発領主や寄進者本人、またはその子孫などの関係者が任じられることが多かったようです。

一方で、本家と領家といった重層的な荘園領主が存在する荘園では、本家が本所である場合、領家のことを預所と呼ぶこともありました。さらに、本家が自己の家司などを預所に任命して、知行させ、その俸禄の代わりとすることもあったようです。領家や家司が預所となった場合には、京都に在住したままその地位を占めることが多く、実際の経営は彼らに任ぜられた代官などが行っていました。

在地預所と在京預所

このように、預所には、在地で実務を行う「在地預所」と、京都に居住する「在京預所」という二つの形態がありました。重層的な荘園領主の構造の中では、両方が存在する場合もあり、その場合は、下級荘官である下司に対して、在地預所を中司、在京預所を上司と呼んで区別しました。

武士の預所への進出

平安時代末期には、本来は事務官的な要素が強かった預所に武士が就く例が増加しました。そして、そのまま地頭や在地領主の地位を得る例も現れました。これは、武士が荘園の管理・運営において重要な役割を担うようになったことを示しています。

鎌倉幕府の規制

鎌倉幕府は、御家人が上司（在京預所）やそれに近い権限を持つ上級荘官に任命されることを禁じる「傍官上司」という規定を設けました。これは、幕府が任命した地頭が、幕府に仕える御家人が上司になることで上下関係が生じるのを避けるためでした。地頭は、荘官としては下司や中司に相当する場合が多かったため、幕府は荘園における御家人の地位を明確にしようとしたと考えられます。

まとめ

預所は、中世荘園制において重要な役割を担った役職であり、その形態や役割は時代や荘園の構造によって多様でした。本所から任命を受け、荘園の経営を担う一方で、武士の台頭とともに、その地位や役割にも変化が見られました。預所の研究は、中世荘園制の理解を深める上で欠かせない要素となっています。

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