東方諸教会

東方諸教会：正教会やカトリックとは異なるキリスト教の伝統

東方諸教会は、正教会（ギリシャ正教）やカトリック教会とは異なるキリスト教の諸教派の総称です。地理的には西ヨーロッパから見て東方に位置する地域、主に中東や北東アフリカで信仰されています。歴史的には、5世紀のカルケドン[[公会議]]における教義論争を背景に、東ローマ帝国の教会（後の正教会）から分離した教会群を指します。

カルケドン[[公会議]]と教義的分裂

451年に開催されたカルケドン[[公会議]]は、キリストの二つの性質（神性と人性）をめぐる論争を解決しようと試みました。しかし、この会議の結果を認めなかった教会が、後の東方諸教会の原型となります。これらの教会は、キリストの人性と神性の関係に関する独自の解釈を維持しました。

具体的には、大きく分けて二つのグループに分類できます。一つは「非カルケドン派」と呼ばれる教会群で、キリストの単一性と完全性を強調する立場をとりました。もう一つは、ネストリウス派の流れをくむアッシリア東方教会です。ネストリウス派は、キリストの人性と神性を完全に分離する立場をとったとされます。ただし、これらの教会自身は、それぞれの立場を「単性論」や「異端」とはみなしていません。

非カルケドン派正教会

非カルケドン派正教会は、聖母マリアを神の母として崇敬し、主教・司祭・輔祭といった聖職位階制度や修道院制度を持っています。ただし、修道会制度はない点が特徴的です。

代表的な非カルケドン派正教会には、以下の教会が挙げられます。

シリア正教会: アンティオキア教会を起源とし、シリア語とアラビア語を奉神礼に用います。「ヤコブ派」と呼ばれることもありますが、これは蔑称的なニュアンスを含むため、教会自身は使用しません。シリア、トルコを中心に分布し、歴史的にインド正教会もその傘下に入っています。
アルメニア[[使徒教会]]: 301年にアルメニア王国が世界で初めてキリスト教を国教とした歴史を持つ教会です。アルメニア、トルコに多く、アメリカにも信者がいます。
コプト[[正教会]]: エジプトを拠点とする教会で、コプト語とアラビア語を用います。エジプト国内では人口の1割が信者であると推定されています。アレクサンドリア総主教は「教皇」の称号を持ちます。
エチオピア正教会: サハラ以南アフリカで植民地時代以前から存在する唯一の教会です。独特の十字架が特徴です。
エリトリア正教会: エチオピア正教会から独立して成立した教会です。
インド正教会: 南インドのマラバール海岸に分布する教会です。

ネストリウス派

ネストリウス派は、カルケドン[[公会議]]においても異端とされたため、非カルケドン派とは明確に区別されることが多いです。代表的な教会はアッシリア東方教会で、イラクやトルコを中心に分布しています。

東方典礼カトリック教会

東方諸教会から分離し、ローマ教皇の権威とカトリックの教義を認めた教会を、東方典礼カトリック教会と呼びます。独自の典礼を維持しながら、ローマ・カトリック教会傘下に入っています。

東方諸教会の分布と広がり

東方諸教会は、主にエジプト、イスラエル、ヨルダン、シリア、レバノン、イラクといった中東地域、そしてスーダン、エチオピア、エリトリアといった北東アフリカ地域に分布しています。近年は、移民増加に伴い、アメリカや西欧諸国にも広がりを見せています。

まとめ

東方諸教会は、正教会やカトリックとは異なる独自の伝統と歴史を持つ、多様なキリスト教の諸派の総称です。中東や北東アフリカを主な拠点としながら、世界各地に広がりを見せており、その歴史と文化は、キリスト教世界全体に大きな影響を与え続けています。それぞれの教会の歴史や教義、文化などを理解することで、キリスト教世界の多様性と豊かさをより深く知ることができます。

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