クロンシュタットのイオアン

クロンシュタットの聖イオアン

クロンシュタットの聖イオアン（1829年10月19日 - 1908年12月20日）は、ロシア正[[教会]]の著名な長司祭であり、その永眠後に正教会の聖人として列聖されました。生前から多くの著作、慈善活動、そして病の癒しの奇跡で広く知られ、その名は同時代の日本ハリストス正教会の記録にも頻繁に登場しています。

生涯と初期の活動

イオアンはアルハンゲリスク近郊のスーラで生まれ、苦学の末に神学校に進みました。26歳でクロンシュタットの聖アンドレイ大聖堂に司祭として赴任しました。この大聖堂は、後に旧ソ連政府によって破壊され、現存していません。

事績と著作

イオアンは、数多くの説教集を含む著作を残しており、その中でも『静思録』は特に有名です。この著作は明治時代の日本正教会によって日本語訳され、他にも様々な説教が翻訳されています。彼の著作は世界中で読まれ、多くの人々に影響を与え続けています。

慈善事業と海外正教会への支援

19世紀末から20世紀初頭にかけて、ロシア帝国が社会問題を抱える中、イオアンは慈善事業と教育に尽力しました。職業訓練所、孤児院、無料宿泊所、製パン所、裁縫所、学校などが彼の活動によって設立されました。また、病に苦しむ人々への癒しの奇跡も伝えられ、多くの人々が彼のもとを訪れました。

イオアンは海外における正教伝道も積極的に支援し、特に日本正教会には多くの聖器物を含む物資を寄贈しました。1903年には、京都ハリストス正[[教会]]の生神女福音聖堂が成聖された際、福音経を贈っています。これは日露戦争の前年であり、当時日露関係が悪化していた時期のことです。

説教と著作の特徴

イオアンの説教と著作は、特に領聖（聖体拝領）に関するものがよく知られています。彼のイコンに聖爵が描かれるのは、彼が領聖の重要性を説いたことに由来します。また、彼はロシア革命と教会が受ける苦難を予見し、人々に悔い改めを呼びかけました。

イオアンは、文豪レフ・トルストイとも交流がありましたが、後にトルストイの聖職者への批判に対し、激しく反論するなど関係が悪化しました。しかし、イオアンはトルストイが正教に戻ることを最後まで望み続けたとされています。

領聖に対する考え方

当時のロシア正[[教会]]では、領聖は頻繁に行われていませんでした。熱心な信徒でも年間の領聖回数は数回程度であり、生涯で数回しか領聖しない人もいました。これは、領聖の際に厳格な斎（ものいみ）や痛悔機密を行う必要があったためです。

イオアンは、聖伝に基づき、領聖を頻繁に行うべきだと主張しました。彼は教区信徒に頻繁な領聖を勧め、個人ではなく集団での痛悔機密を行い、多くの人々の領聖を支援しました。現在でも、領聖に対する見解は様々ですが、イオアンの著作は、頻繁な領聖を推奨する立場を支持する根拠としてしばしば引用されます。

レウシンスキー女子修道院とポドヴォリエ

イオアンは、レウシンスキー女子修道院を創建し、サンクトペテルブルクにはポドヴォリエを設立しました。レウシンスキー女子修道院は、旧ソ連時代に閉鎖され、ダムの湖底に沈んでしまいました。ポドヴォリエは、精神病院に転用されましたが、ペレストロイカ後に一部が教会に返還され、現在も使用されています。

思想傾向

イオアンは、ロシアの君主制を支持し、排外主義的な政治組織である「ロシア人民連合」の一員として、反セム主義団体の黒百人組の活動を支持していたとされています。一方で、ユダヤ人虐殺事件を非難するなど、矛盾する側面も持ち合わせていました。また、海外での伝道活動にも尽力し、特に日本をはじめとする異文化圏への伝道活動を支援しました。

まとめ

クロンシュタットの聖イオアンは、その信仰と慈善活動を通じて、多くの人々に影響を与えた人物です。彼の著作や思想は、現代においても正教会内外で重要な役割を果たしています。

もう一度検索