頼春風

頼 春風（らい しゅんぷう）について

頼春風は宝暦3年（1753年）に誕生し、江戸時代の日本で儒医として名を馳せました。彼は広島県竹原市に生まれ、通称は松三郎、諱は惟彊、字は千齢または叔義と呼ばれています。

春風の家系は小早川氏に仕官していたと言われる頼家で、安芸国竹原で海運業を開始し、その後は紺屋業にも携わっていました。その当主である頼惟清には5人の息子がいましたが、長男と五男は早逝してしまいました。残された2人の兄弟は春風の名前を持つ他、頼春水と頼杏坪です。この三兄弟は学問において高い評価を受け、「三頼」と称されました。特に、兄の頼春水の息子である頼山陽は、後に有名な詩人・歴史家となります。

春風は非常に熱心に学問に励み、14歳のときには兄の春水に従い大阪で勉強を始めました。その後、弟の杏坪も共に学び、彼は尾藤二洲と親交を深めました。儒学や医術においては、古林見宜から指導を受け、彼の知識を磨いていきました。

安永2年（1773年）、父の病気により春風は竹原に戻り、頼家の家督を継ぎました。この頃から医業を行い、新たに塩田経営を開始しました。天明元年（1781年）には自宅「春風館」を建設し、紺屋の業務は叔父に譲ることになりました。彼は地元の文化の向上にも寄与し、寛政5年（1793年）には郷塾「竹原書院」を設立し、兄と共に講師となりました。この学校はその後も存続し、現在では市立竹原書院図書館となっています。

兄弟間の絆は深く、学問や詩文、書道において特に優れた才能を発揮していました。春水からは「春水は方、春風は円、杏坪は三角」という詩が残され、春風の温和な人柄が表現されています。春風は竹原で穏やかな生活を送りましたが、兄弟たちが広島藩の儒官として出世する中でも、彼はその生活スタイルを貫きました。

また、兄の春水の子である頼山陽が逃亡した際には、春風も彼の追手となりました。後に山陽が捕まり幽閉された際には、彼は『日本外史』の構想を考案しましたが、その題名は春風の提案によるものとされています。春風は春水の嗣子がいなくなったことから、自らの長男を養子として迎え入れました。

彼の人生の終焉は文政8年（1825年）に訪れ、享年73歳で春風館にて亡くなりました。その墓地は竹原の照蓮寺にあります。著作には『春風館詩鈔』や『適肥』『芳山小記』などがあり、彼の知識や文学的才能は後代に引き継がれています。子孫の中には広島大学名誉教授の頼桃三郎・頼祺一親子もおり、彼の影響は広がっています。

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