顧大章

顧大章（こ だいしょう）：清廉な官僚の悲劇

顧大章（1567年 - 1625年）は、明代末期の官僚であり、字を伯欽、号を塵客と称しました。彼は、父である南京太常寺卿の顧雲程の息子として生まれ、弟の顧大韶とは双子でした。

官僚としての道のり

1607年、顧大章は進士に及第し、泉州府推官に任命されました。その後、常州府教授への転任を希望し、父の死に伴う喪に服すために一度辞職しました。喪が明けると、朝廷内では朋党の対立が激化し、清流派の士大夫たちは苦境に立たされていました。顧大章は、この状況を憂い、後漢末の賈彪に自身を重ね、東林党の人々と共に現状を打開しようとしました。北京では国子博士に任じられ、朝廷の要人たちとの交流を通じて人脈を広げ、清流派の人々から信頼を得ました。

その後、刑部主事に転じ、使節としての任務を終えた後、刑部員外郎に進みました。1622年には、刑部尚書の王紀の命で山東司の事務を代行しました。前年の遼陽陥落後、多数の者がスパイ容疑で逮捕されていましたが、顧大章は王紀に進言し、一部を除いて釈放しました。また、佟卜年の事件では、当初、流刑の方針だったものの、刑部侍郎の楊東明が死刑を主張し、顧大章はこれに反対して争いました。

魏忠賢との対立と失脚

宦官の魏忠賢は、劉一燝の事件に際し、顧大章の妨害により計画を頓挫させられ、彼に恨みを抱きました。また、遼陽での敗戦の責任を巡る議論では、顧大章は王化貞を処刑し、熊廷弼を降格すべきと主張し、法司の意見と対立しました。さらに、王紀が徐大化を弾劾した際、徐大化らは顧大章が背後で糸を引いていると疑い、彼を憎むようになりました。徐大化は、御史の楊維垣に依頼し、顧大章が「八議」を偽って唱えていると弾劾させました。顧大章は自身を弁護しましたが、楊維垣はさらに、顧大章が熊廷弼から賄賂を受け取ったと攻撃しました。都御史の孫瑋らがこの誣告を証言し、顧大章は弁論を汚したとして俸給を剥奪され、官を辞して帰郷しました。

最期

1625年、顧大章は再び官に起用され、礼部郎中・陝西副使を歴任しました。しかし、徐大化と楊維垣の策動により、汪文言の事件に連座させられ、逮捕され拷問を受けました。不正な金品を隠匿した罪を着せられ、刑部の獄に移され、楊漣ら5人の惨死を知らされました。顧大章は屈服せず、刑部尚書の李養正らは、移宮の案をめぐり李選侍を仁寿宮へ移したことに関わった6人を死罪にすべきと上奏しました。魏忠賢は詔を偽造し、顧大章を鎮撫に移送しようとしました。顧大章は絶望し、「どうして再びこの獄に入ることができようか」と嘆きました。そして、弟の顧大韶に別れを告げ、酒とともに毒薬を飲みましたが死なず、首を括って自害しました。享年59歳でした。

死後の評価

顧大章の死後、崇禎帝の時代には太僕寺卿の位が追贈されました。南[[明]]の福王政権下では、裕愍と追諡されました。

顧大章は、その清廉潔白な官僚としての姿勢と、権力闘争に巻き込まれて非業の死を遂げた悲劇的な生涯を通じて、後世にその名を残しています。

参考文献

* 『明史』巻244 列伝第132

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