風早郡

風早郡（かざはやぐん）

風早郡は、かつて愛媛県（旧伊予国）に存在した郡です。この地域は古代には風速国造の勢力下で発展し、歴史を通じて様々な変遷を経験しました。以下に、その詳細な歴史と地理的範囲、行政区画の変遷について記述します。

古代

風早郡は、古代においては風速国造の支配領域が基盤となり成立しました。この地域は、古代日本の地方行政において重要な役割を果たしていました。

式内社

『延喜式』神名帳には、風早郡内に存在する式内社が記録されています。これらの神社は、古代における信仰の中心地であったと考えられます。

明治維新後

1878年（明治11年）に、行政区画としての風早郡が正式に発足しました。当時の郡域は現在の松山市の一部（小川、光洋台、西谷、大西谷、菅沢町、神次郎町、上総町、梅木町、九川以北、及び興居島・釣島を除く忽那諸島）にあたります。この地域は、明治維新後の行政改革に伴い、新たな郡として再編されました。

沿革

風早郡の支配は、明治初期に大きく変動しました。「旧高旧領取調帳」によると、明治初年時点での支配は以下の通りでした。

慶応4年1月27日（1868年2月20日）：戊辰戦争の影響により、松山藩預地が大洲藩預地となりました。この変更は、「旧高旧領取調帳」と「府藩県高帳」の記録に差異が見られますが、後者の記録を基に、風間郡内高754石9斗8升5合が大洲藩の御預所となりました。
明治4年
1月19日（1871年3月9日）：大洲藩預地であった風間郡内大浦村外二箇村が倉敷県の管轄となりました。
7月14日（1871年8月29日）：廃藩置県により、藩領が松山県と大洲県の管轄に分かれました。
9月14日（1871年10月27日）：倉敷県の管轄地域が丸亀県の管轄に移管されました。
11月15日（1871年12月26日）：第1次府県統合により、丸亀県の管轄地域と旧松山藩領が松山県、旧大洲藩領が宇和島県の管轄となりました。
明治5年
2月9日（1872年3月17日）：松山県の管轄地域が石鉄県の管轄となりました。
6月23日（1872年7月28日）：宇和島県の管轄地域が神山県の管轄となりました。
明治6年（1873年）2月20日：全域が愛媛県の管轄となりました。

郡の発足と町村制の施行

明治11年（1878年）12月16日：郡区町村編制法の施行により、行政区画としての風早郡が発足しました。郡役所は北条村に設置され、野間郡と共に管轄されました。
明治17年（1884年）11月：「風早和気温泉久米郡役所」が温泉郡松山榎町に設置され、同郡、和気郡、久米郡と共に管轄されました。
明治22年（1889年）12月15日：町村制の施行により、以下の12村が発足し、全域が現在の松山市となっています。
浅海村: 浅海本谷村、浅海原村が合併。
難波村: 下難波村、中通村、上難波村、庄村の一部が合併。
立岩村: 才之原村、滝本村、猪木村、猿川村、中村、米之野村、庄府村、儀式村、小山田村、猿川原村、尾儀原村、萩原村、庄村の一部が合併。
正岡村: 八反地村、中西内村、中西外村、寺谷村、院内村、波田村、神田村が合併。
北条村: 北条村、辻村、土手内村、安居島村が合併。
河野村: 別府村、宮内村、善応寺村、横谷村、閏谷村、九川村、常保免村、佐古村、高山村、牛谷村、大河内村、中須賀村、片山村、夏目村が合併。
粟井村: 小川村、磯河内村、鴨之池村、和田村、河原村、安岡村、常竹村、本谷村、西谷村、大西谷村、客村、麓村、平林村、小川谷村、久保村、鹿峰村、苞木村が合併。
五明村: 菅沢村、神次郎村、城山村、柳谷村、恩地村、小屋村、梅木村、上総村が合併。
睦野村: 睦月村、野忽那村が合併。
東中島村: 大浦村、小浜村、長師村、宮野村、神浦村が合併。
西中島村: 粟井村、畑里村、饒村、吉木村、熊田村、宇和間村が合併。
神和村: 元怒和村、津和地村、二神村、上怒和村が合併。

郡の廃止

明治30年（1897年）4月1日：郡制の施行により、温泉郡、久米郡、風早郡、和気郡、そして伊予郡、下浮穴郡の各一部の区域が統合され、改めて温泉郡が発足しました。この時、風早郡は廃止されました。

脚注

「旧高旧領取調帳」の記載について、国立公文書館所蔵「府藩県高帳」の記述に基づき、一部修正を行いました。

参考文献

「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編『角川日本地名大辞典』 38 愛媛県、角川書店、1981年10月1日。ISBN 4040013808。
旧高旧領取調帳データベース

関連項目

消滅した郡の一覧

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