食道園 (大阪)

株式会社食道園は、大阪府大阪市中央区に本社を置く、焼肉料理を主体とした外食チェーンを展開する企業です。

創業と黎明期

その歴史は、第二次世界大戦終結から間もない1946年（昭和21年）に始まります。江崎光雄氏（朝鮮名：林光植氏）が大阪の千日前に「食道園」という名の食堂を開業したのが始まりでした。当時のメニューの中心は平壌冷麺や焼いた鶏肉などでしたが、食糧不足が深刻な時代背景にあって牛肉の入手は容易ではありませんでした。しかし、やがて状況が好転するにつれて、鶏肉から現在の主力である牛肉へと提供する肉の種類が変化していきました。

組織化と発展

創業から数年を経た1952年（昭和27年）、事業は法人組織へと改められ、「株式会社食道園」が設立されました。高度経済成長期を迎えた1960年（昭和35年頃）には、焼肉メニューの種類は飛躍的に増加し、カルビやロースといった定番部位に加え、ミノ、レバー、センマイといった内臓系まで含め、約30品目に及んでいました。

日本の焼肉スタイルの確立

この時期、食道園は日本の現代焼肉のあり方に大きな影響を与える独自のスタイルを確立しました。それは、熱々の焼いた肉を、あらかじめ用意された醤油ベースのつけだれにつけてから食するという方法です。これは、焼きたての肉をすぐに、かつ美味しく食べるための工夫であり、現在の日本の焼肉の食べ方の源流の一つと考えられています。当時の店舗には、後の国民的ヒーローとなる力道山や、歌姫として一世を風靡した美空ひばりといった著名人も常連として名を連ねていました。

本店移転と象徴的ビル

都市計画に伴う千日前通の拡張工事のため、食道園は創業の地を離れることになります。1967年（昭和42年）に宗右衛門町への立ち退き移転を実施し、その翌年である1968年（昭和43年）には、現在の本店ビルが完成しました。このビルは、その建築様式や歴史的価値が評価され、2013年（平成25年）には大阪市によって、大正時代から高度成長期にかけての魅力ある建築物を顕彰する「生きた建築ミュージアム・大阪セレクション」の一つに選定されています。

焼肉弁当と全国への普及

食道園はまた、「焼肉弁当」という新たな商品形態を考案しました。そして1970年（昭和45年）に開催された日本万国博覧会（大阪万博）でこれを提供したところ、一日あたり6,500食を売り上げるという記録的なヒットとなりました。この焼肉弁当の成功は、それまで一部で食されていた焼肉を、より広く一般の人々が認知し、親しむようになる大きな契機となりました。

店舗展開の拡大

1967年（昭和42年）の北新地店オープンを皮切りに、食道園は関西地方を中心に店舗網を広げていきました。その後も着実に店舗数を増やし、2023年（令和5年）時点では、合計13店舗が営業しています。

関連事業

食道園グループには、関連企業としてYACOOが存在します。

このように、株式会社食道園は、戦後の食糧難時代から高度成長期を経て、現代に至るまで、日本の焼肉文化の形成と普及において重要な役割を果たしてきました。特に、独自のつけだれスタイルの考案や焼肉弁当の成功は、その後の日本の外食産業にも大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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