飯塚定輔

飯塚 定輔（いいづか さだすけ）は、明治末期に生まれ、激動の昭和期を実業家そして政治家として駆け抜けた人物です。1897年（明治30年）10月14日、秋田県雄勝郡（現在の羽後町）に生を受けました。

学業を終えたのは1927年（昭和2年）、日本大学法文学部法律学科を卒業しています。社会人としてのキャリアは多岐にわたり、公益財団法人である協調会の嘱託、国務大臣秘書官、そして政党である立憲民政党の政務調査会専門調査員といった公的な性格を持つ職務に携わりました。これと並行して、実業界においても手腕を発揮し、末広汽船の社長や菊谷工業の取締役会長といった企業の経営を担っています。こうした多様な経験は、後に政治家としての活動に大いに生かされることとなります。

飯塚が本格的に国政の場を目指したのは第二次世界大戦終結後のことです。1947年（昭和22年）4月に行われた第23回衆議院議員総選挙において、旧秋田県第2区から民主党公認候補として立候補しましたが、惜しくも次点で当選を逃しました。しかし、政治への情熱は衰えることなく、その2年後の1949年（昭和24年）1月実施の第24回総選挙に民主自由党の公認を得て再び挑戦し、見事初当選を果たし、国政の議席を獲得しました。この初当選を皮切りに、続く1952年（昭和27年）の第25回総選挙、1953年（昭和28年）の第26回総選挙でも連続して議席を確保し、順調に政治家としてのキャリアを築きました。しかし、1955年（昭和30年）2月の第27回総選挙では議席を失う結果となります。

一時的な後退はあったものの、飯塚は諦めませんでした。1958年（昭和33年）5月の第28回総選挙で再び当選を果たし、続く1960年（昭和35年）11月の第29回総選挙でも議席を守り抜きました。これにより、飯塚は衆議院議員として合計5期にわたり国政に携わったことになります。この議員在任中、彼は政府や国会、そして所属政党において様々な重要な役職を歴任しました。政府においては、第5次吉田内閣で郵政政務次官として国の通信行政に深く関与し、第2次池田内閣では外務政務次官として外交分野における要職を担いました。国会では、衆議院の逓信委員長として関連法案の審議を主導する立場にありました。また、所属政党においては、民主自由党の政務調査会逓信部長、自由党の組織局青年部長や副幹事長、そして自由民主党の総務、広報委員会副委員長、政務調査会行政調査会副会長など、党運営や政策立案に関わる数多くの要職を歴任し、党勢拡大や政策形成に貢献しました。

その後も飯塚は国政への関わりを持ち続け、1963年（昭和38年）の第30回総選挙、1967年（昭和42年）の第32回総選挙に立候補しましたが、残念ながら再び議席を得ることはできませんでした。

長年の公職への貢献が認められ、1970年（昭和45年）11月の秋の叙勲において、勲二等に叙され、瑞宝章を受章するという栄誉に浴しました。しかし、この叙勲を受けた直後の11月5日、飯塚はその生涯を終えました。死因は肝硬変で、享年73歳でした。東京都立川市にある立川病院で息を引き取っています。

その功績に対し、没後さらに高い位階が贈られることとなりました。特旨をもって位五級を追陞され、死没日付で従六位から正四位へと叙されました。告別式は東京の青山葬儀所で執り行われました。

飯塚定輔は、実業家として経済の一翼を担う傍ら、戦後政治の混乱期から安定期にかけて、衆議院議員として5期にわたり国政の場で活動し、政府や党の要職を歴任するなど、日本の発展に寄与した人物として記憶されています。

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