飯島虚心

飯島虚心（1841年 - 1901年）は、明治時代の日本の美術史家であり、特に浮世絵研究の分野で重要な足跡を残しました。本名は半十郎といい、虚心は号です。

生い立ちと幕末の動乱

飯島虚心は、江戸幕府の徒士である飯島善蔵の長男として江戸に生まれました。幼少期から学問に励み、昌平黌で学びました。1863年には幕府の上海視察団に書物御用出役として同行するなど、早くからその才能を発揮していました。その後、騎兵差図役並に配転され、成島柳北の配下として勤務する中で、益田孝、矢野二郎と共に断髪したという逸話も残っています。

幕末の動乱期には、幕府軍の一員として戊辰戦争に参加し、榎本武揚と共に江戸湾を脱出し、箱館戦争にも参戦しました。五稜郭の陥落に伴い捕虜となりましたが、後に赦免されています。

明治維新後の活動

明治維新後は、文部省編集局に入り、教科書編集の仕事に携わりました。この時期に、大槻如電、大槻文彦、那珂通高、榊原芳野らと交流し、「洋々社」というサークルを結成し、機関誌の編集も行いました。

虚心という号は、友人である中村正直が、新約聖書「マタイによる福音書」の「心の虚しき者は幸なり」という言葉にちなんで名付けたと言われています。

浮世絵研究への情熱

飯島虚心は、文部省での仕事の傍ら、浮世絵研究に情熱を注ぎました。多くの浮世絵師の伝記や画集を執筆し、その功績は今日の浮世絵研究の基礎となっています。

主な著書として、『木曾沿革史』(未刊、1879年)、『初学山林書』(1882年)、『浮世絵師便覧』(1893年)、『葛飾北斎伝』(1893年)、『浮世絵師歌川列伝』(1941年)、『河鍋暁斎翁伝』(1984年)、『蒔絵師伝・塗師伝』(1925年)、『日本絵類考』(1900年)などが挙げられます。中でも、『葛飾北斎伝』は、北斎研究における重要な文献として、現在でも広く読まれています。

晩年と死

飯島虚心は、晩年を東京の下谷上根岸で過ごし、1901年に胃がんのため61歳で亡くなりました。法名は「清閑院霊誉虚心居士」です。墓は静岡県の最誓寺にあります。

飯島虚心の功績

飯島虚心は、幕末から明治にかけての激動期を生きた人物であり、その生涯は、激動の時代を生き抜いた人々の姿を物語っています。また、彼は浮世絵研究の先駆者として、その後の美術史研究に大きな影響を与えました。彼の著作は、現在でも美術史研究の重要な資料として活用され、その功績は長く語り継がれるでしょう。

特に『葛飾北斎伝』は、当時の北斎に関する資料が乏しい中で、詳細な伝記をまとめた貴重な文献であり、北斎研究に大きな貢献をしました。

また、『浮世絵師便覧』は、多くの浮世絵師の略歴や作品をまとめたもので、浮世絵研究において欠かせない資料の一つです。

飯島虚心の研究は、浮世絵という日本独自の美術を後世に伝える上で、非常に重要な役割を果たしました。

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