飯田城 (信濃国)

飯田城（いいだじょう）

飯田城は、長野県飯田市に位置する日本の城で、平山城に分類されます。江戸時代には飯田藩の藩庁が置かれました。

概要

飯田城は、13世紀初頭に信濃国伊那郡郡戸荘飯田郷の地頭であった坂西氏によって築かれたとされています。戦国時代には武田氏の支配下に入り、その築城様式の影響が見られます。武田氏滅亡後、織田氏、徳川氏、そして京極氏の支配を経て、江戸時代には小笠原氏、脇坂氏が城主となり、最終的に堀氏が明治維新まで居城としました。この間、近世城郭としての整備が進められました。

歴史

鎌倉時代

坂西氏が飯田に入部し、当初は松原宿周辺に居住しましたが、後に愛宕城を築きました。坂西氏の出自は不明確であり、地頭であったとも、庄官であったとも言われています。阿波の坂西氏との関係や、小笠原氏との関連も指摘されていますが、詳細は不明です。

室町時代

坂西氏は、より広い用地と要害の地を求めて飯田城を築き、愛宕城から移りました。この際、山伏の修行場となっていた場所と交換したと伝えられています。

戦国時代（武田氏時代）

1554年、武田信玄が下伊那に侵攻し、飯田城は武田氏の領土となりました。武田氏は南三河国への侵攻拠点として、高遠、大島、飯田を拡張し、飯田城には武田氏式の築城様式が残されています。1562年には秋山虎繁が城主となり、その後、坂西織部亮が城主となりました。

安土桃山時代（織田・豊臣氏時代）

1582年、織田信長・徳川家康連合軍による甲州征伐の際、飯田城は織田信忠の攻撃を受け、城将たちは高遠城へ逃亡しました。その後、下条頼安が飯田城を掌握し、菅沼定利を経て、毛利秀頼、京極高知へと引き継がれました。

構造

飯田城は、天竜川の支流である松川と野底川に挟まれた河岸段丘の先端を利用して築かれた平山城です。本丸を東部に置き、西に向かって二の丸、桜丸、出丸が配置されていました。本丸には土塀に囲まれた御殿を中心に、7棟の建物がありました。

遺構

明治維新後、城内には筑摩県の飯田支庁が置かれましたが、多くの構造物は取り壊されました。本丸跡は長姫神社の境内となり、石塁、空堀、土塁の一部が残っています。二の丸跡には飯田市美術博物館が、桜丸跡は長野県飯田合同庁舎として利用されています。桜丸水の手門の石垣がわずかに残存しています。

移築された建物としては、桜丸御門（赤門）、薬医門（経蔵寺）、馬場調練場の門（脇坂門）、八間門（民家）が現存しています。

桜丸御門（赤門）

桜丸御門は、飯田城桜丸の正門であり、弁柄の色から「赤門」とも呼ばれています。1754年に完成した入母屋造の門で、狐格子と蔐懸魚が特徴的です。長野県内で建築当時と同じ場所に残る城門は、小諸城の大手門と三の門、上田城の藩主居館表門、そして飯田城の桜丸御門の4例のみです。明治時代には県庁舎や郡役所の正門として利用されましたが、現在は飯田市有形文化財に指定されています。

桜丸御殿の夫婦桜

飯田藩初代藩主の脇坂安元は桜を愛し、御殿の庭園に2本の桜を植えました。この桜は、片方がシダレザクラ、もう一方がエドヒガンであり、根元が結合して「夫婦桜」と呼ばれるようになりました。2種類の桜が合体しているのは珍しく、樹齢は約400年と推定されています。

城下町

飯田城の城下町は、谷川橋を境に橋北と橋南に分かれていました。橋北は三州街道の宿場町として機能し、橋南には問屋が置かれていました。江戸時代中期からは中馬輸送の中継地として栄え、賑わいを見せました。その様子は「南信の小京都」と称されるほどで、かつては全国京都会議にも加盟していました。

飯田最古の道標

大横町と殿町の角には、1596年に建立された道標があります。現在のものは1879年に再建されたもので、花崗岩の四角柱に方角と行き先が刻まれています。

脚注

[1] 『長野県百科事典』（1974年 信濃毎日新聞社）
[2] 内藤昌康「八間門:田園風景の中で異彩を放つかつての飯田城の城門」『そう:東三河&西遠・西三河・南信応援誌』第51号、春夏秋冬叢書、2016年、51-55頁。

関連項目

日本の城一覧
めがね橋 (飯田市) - 石垣・真砂を転用

外部リンク

日本の城がわかる事典『飯田城』 - コトバンク
「飯田城の歴史」飯田市HP

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